忘却!!
「復活なのじゃーーっ!」
私の差し出した最弱の七席の右手の肉を寝ながら貪っていたアンデッドドラゴンが、ぼふんと音を立てて人型になると、嬉しそうに叫び声をあげる。
前の通り、人の子供サイズの大きさになっていた。
無事にアーリと戻った私は、さっそく眠りについたままだったアンデッドドラゴンの元へと来ていたのだった。
「おおっ」「良かったですねー」「可愛い」
周囲には、見学に集まっていたシェルルールやタウラ、カリーン達。領都プタレスクへと戻っていた一同が勢揃いして歓声を上げている。
「さーて、さっそく。……なにするんじゃったかの?」
こてんと首を傾げるアンデッドドラゴン。
ざわつく周囲の面々。
「──いや、これの続きをお願いできたらと、思うんだけど」
私は、自分が話を進めるべきかと思い、作りかけの黒呪布と、スクロールに巻き付けた状況の黒い糸を取り出してアンデッドドラゴンに見せる。
「おおっ! そうじゃったそうじゃった。──はて、貴殿はどちら様かの?」
ざわめいていた面々が、そこでぴたりと口を閉じる。
流石にただ事ではないと皆、察したのだろう。重苦しい沈黙がおちる。
しかしそんな雰囲気を、当の本人であるアンデッドドラゴンは気にした風もなく。
セイルークを手招きするとよいしょっとその首に登ろうとする。
小人サイズの時より体が大きくなって重たいのか、バタバタと足を動かし、うまく登れない様子のアンデッドドラゴン。
見かねたシェルルールがアンデッドドラゴンの脇の下へ手をさしいれ持ち上げる。そのまま、セイルークの首にのせてあげるシェルルール。
「おお! 気が利くの、そこの女性! さてさて。さっそくやりますかのー」
嬉々とした様子でセイルークの首にまたがったアンデッドドラゴンは、祈りの仕草をとる。
魔素がざわめく。
次の瞬間、黒い糸がうごめきじめ、黒呪布へと織られていく。
「……ルスト、あれはどういうことだ?」
「わからない。一種の記憶障害のように見えるけど」
私の耳元で小声で話しかけてくるカリーン。他の面々も集まってきて、頭をつき合わせるようにして、私とカリーンの小声の会話に聞き耳を立てる。
「記憶障害か。問題は一時的なものか、もしくは……」
「ああ。長引くと厄介かも。どうやら黒呪布を作ってくれているところをみると、一部の記憶はあるみたいだけどね。本当はツヴァイの事とか色々と聞きたいことがあったんだけど、安全面を考えると、確認も慎重になった方がいいかもしれない」
「下手すると、暴れる可能性があると?」
「わからないけどね。ただ、ドラゴンは謎ばかりだから」
「まあ、ルストが慎重にと言うのであれば私は反対はしない。それで記憶障害になった原因に、心当たりは?」
「どうだろう。最弱の七席の肉かな? もしくは、前に無理やり人型になったことの副作用か。それか、何せ千歳を越えているらしいから……」
祈りの姿勢のまま、片手をほどいてびしっとこちらを指差すアンデッドドラゴン。
「そこ! アンちゃんはのー、ぴちぴちじゃぞ!」
どうやら聞こえていたらしい。
「──ああ、そうだね。申し訳ない、アンさん」
代表して謝っておく。
「うむうむ。わかればよろし」
満足した風のアンデッドドラゴン。再び祈りの姿勢をとると、黒呪布を織っていく。
私たちは顔を見合わせると、黙ってその様子を眺めていた。




