新しくできた魔導具を渡そう!!
あのあと、ロアの診断とアーリの魔導具の検査と診断も終えた私は一人天幕で悩んでいた。
私の目の前には、すでに作った二人分の新たな魔導具が並べてある。二つとも顔にかける布タイプだ。性能は大きく向上していて、二人の異能の特性にもできるだけ寄り添った機能にしてある。とはいえ、二人が元々つけていた魔導具は気休め程度に異能の制御に補正がかかる程度だったのだ。かなり簡単に新しい魔導具は作れた。
では一体、何を悩んでいるのかと言えば、上位互換の物を作るのが果たして正解だったのか、ということ。
あの二人の魔導具は明らかに、作成者との、親しい間柄の絆を感じさせる物だった。普通に上位互換の物を渡すと、まあ普通に考えて今使っている物は用済み、だろう。
ただ、異能には、その希少さゆえに不明な部分も非常に多い。心理的なものが制御に影響することは否めない。
制御能力を補佐するだけなら、実は今二人が使っている物が与える安心感の方が、作り直したことによる性能の向上より勝っているかもしれないのだ。
私が悩み疲れてぼーとしていると、視線は何となく白とかげへ。白とかげは相変わらず眠り続けている。
そっとそのひんやりとした体を優しく撫でる。
「──大きくなった? それにここ、こぶがあるような?」
気になった私は転写のスクロールで念のため確認してみる。
「問題は無さそうだ。成長しているだけか、良かった。しかしまるで意識を封じられているかのように寝続けているよな……」
ひとまず安心した私は、眠り続ける白とかげを撫でながら、いつしか自分の長年の研究テーマへと思考がスライドしていた。
最近、研究には行き詰まりを感じているのだ。もちろん、前の職場では、押し付けられた雑用に、研究費の不足という難敵がいたわけだが。
「別のアプローチを試してみる時期なのかな。別のアプローチ、か」
私はそこでふと、思い付いく。
「そうか。別のアプローチか。そうだよな。制御の能力を向上させることにこだわらなくても。──完全なオンオフなら。それをタイムスパンを短くしてオート制御で──」
空白の羊皮紙を取り出すと、思い付くままに魔導回路図を書きなぐっていく。
途中、急いで魔導回路の載った本を取り出し、参照していく。
「ここの部分はこの術式を反転させて……。そうだ、この部分を応用すれば」
私はすっかり自身のライフワークたる研究のことをいったん忘れて、ロアとアーリの魔導具作りにのめり込んでいた。
◇◆
後日、私は再びアーリ達姉妹を呼び出していた。
「アーリ、ロア。二人のための新しい魔導具が完成したよ」
私は二人にそれぞれ一つ、魔導具を差し出す。
「まずはロアから、着けてみてくれるかな?」
ロアは私の手から合金製の魔導具を受けとる。
「うん」とロア。
「そこの金属の細長い部分を広げるようにして。……そう。それでそこの部分を耳にかけるんだよ。お、出来たかな?」
「こう?」
「そうそう。それであとはその顔を覆っている布を外してみて欲しい」と私。
恐る恐る、布の魔導具を外すロア。
現れたのは、私が新しく作った、眼鏡型の魔導具をつけたロアの姿だった。
「よく似合っているよ。その姿。それで使い方なんだけど──」
私はロアに新しい魔導具の使い方を説明する。
私の説明を聞き、早速ロアは新しい魔導具の動作確認を始めた。
間違えて完結にしてしまいました。
お騒がせしてしまって大変申し訳ございませんでした。




