浄光の除去!
私の手袋をした右手が、浄光の光によって焼かれていく。《純化》の処理を施し、並大抵のものであればびくともしない特製の手袋。それが浄光の前では、まるでただの布きれのようだ。
すぐに浄光は私の右手をじかに蝕み始める。徐々に強くなる右手の痛みは、なぜだか、どこか懐かしさを感じさせるものだった。
「っ! ルスト師、手がっ!」
こちらを振り返り一度絶句し、動揺をみせるアーリ。あわあわと手を動かし、しかしどうしていいのか、わからない様子だ。
おろおろとしているアーリなんて、なかなか見れないなーと、心の片隅で思いながら、しかしさすがに返事をする余裕は私にも無い。
──あまり、時間が無い。何よりもはやくこの浄光の光を何とかしないと……。先程からの挙動をみても、この浄光は、炎のような特性を与えられているのだろう。
まじまじと焼かれていく右手を見る。
──しかしその本質は同じなはず。呪術と魔素の複合体だ。そうであるならば、干渉が、できるっ!
手袋が完全に焼け落ちる。痛みが一気に強くなるなか、私は右手に呪いを発動させる。
右手から溢れだした黒い呪いと、浄光の青白い輝きが混じりあう。一瞬、右手を蝕む浄光が呪いの黒色に染まり、止まる。しかしすぐに呪いの黒は、浄光の青白い光にのまれてしまう。
「あっ! ああ……」
私の手元を注視していたアーリの喜びの声が、すぐに落胆にそまる。
──のまれた。でも、一瞬タイムラグがある。これなら、いけるっ。
「ローズ、例のものを」
残っていた蔓を素早く動かし、私のリュックから品物を取り出すローズ。私の曖昧な指示に、とても的確に対応してくれる。
「広げて!」
それは真っ黒な布。呪いを錬成した糸で、アンデッドドラゴンの原初魔法により織られた作りかけのもの。
それをローズが指示通りに広げてくれる。
私はそれを確認すると再び右手から呪いを展開する。今度は一方の方向に押し出すように。私の右手を、最弱の七席の手を、そして骨のナイフをおおっていた浄光が、呪いとともに一瞬だけ片側に集まる。
さっとそれを真っ黒な布に擦り付けるように滑らす。
不思議な感触が、右手に伝わってくる。弾力と粘り気があってうまく切り離せなかった物が、急に粘り気を失ってスッと刃が通ったかのような、そんな感触だ。
気がつけば、拍子抜けするほど簡単に、浄光の光はすべて布の上に濾しとられていた。




