ローズの勇気
ローズの蔓が、握った骨のナイフごと燃え盛る最弱の七席の、落ちた手へと巻き付く。
覆いつくすように蔓が手全体へと何重にも巻き付いていく。しかしそれだけでは当然、浄光の光は消えない。
逆に蔓の隙間から漏れ出るように光は広がり、ローズの蔓をくすぶるように侵食していく。
「ローズ、無茶を! アーリ、いったん下がるよっ」
「わかりました! 私が前に!」
スキルの効果で手元に戻ってきた槍を手に、アーリが答える。その穂先に貫かれたモンスターの姿が消えていく。それは蘇りし者達と、同じ消え方。
──ツヴァイの手の者が最弱の七席の配下に混じっていたのか。監視されていたとはな。
ローズの本体をスクロールへと戻し、浄光の光が侵食している部分だけを残すようにすると、私はアーリに続き、セイルークへ乗る。
すぐに離陸し、その場から離れるセイルーク。
ギリギリだった。
最弱の七席を助けようと突っ込み、浄光の光の飛び火をまとったモンスターの死体が、先程まで私たちが居た場所をちょうど横切るように飛んでくると、そのままごろごろと地面を転がっていく。
しかしゆっくりその様子を見る余裕は無い。セイルークに乗って上空を飛び、その場から離れる間にも、浄光の光でローズの蔓が次々に燃え崩れていく。ローズはその度に新しい蔓を繰り出してはナイフと最弱の七席の手へと巻き付け、それらが落下しないように支える。
その身を削りながら。
しかしそれも長くは続かなそうだ。浄光の光が徐々に蔓を伝って、ローズを顕現しているスクロールへと近づいて行く。
「このままだと、ローズがもたない。一度降りて処置を──」
「ルスト師、ここではまだ、危険ですっ!」
アーリの制止。少しその数を減らしたものの、上空には相変わらず無数のモンスター達の姿がある。
「いっそ、蔓を切断して、手を破棄……」
私は最弱の七席の肉片を諦める提案をする。
しかし、ローズの残された蔓が、それに否定の仕草をする。
まだ大丈夫とばかりに元気に蔓を動かすローズ。空元気なのが、見え見えだ。
とはいえ、危険をおかし文字通り身を削ってローズが確保してくれた最弱の七席の肉片だ。
私はツインテールホーンのナイフを左手で引き抜きながら呟く。
「そうだな、諦めることは、ローズの頑張りを無にすることになるよな──」
「ルスト師、何をするつもりですかっ!」
私はスクロールを動かすと、目の前にきた浄光をまとったままの最弱の七席の手がくるように調整する。
「ローズ、ちょっと剪定するよ」
左手のツインテールホーンのナイフを一振り。私の言葉を聞いて、ひゅっと縮こまったローズの浄光に侵された蔓を、一刀のもとに切断する。
一瞬、宙に浮いた浄光をまとった最弱の七席の手を、私はそのまま右手で受け止めた。




