石の椅子と蔓の椅子
「ローズ、お願い」
周りからの視線を感じるな、と思いながら私はローズに声をかける。その声に、蔓を伸ばしていくローズ。
──なんだかいつもより動きがもったいぶってません、ローズさん?
まるで上空を埋め尽くすモンスターたちに、そして目の前に座る最弱の七席に見せつけるかのように悠々とした動きをしながら、椅子を組み上げていくローズ。
その椅子自体もだいぶ手が込んでいるようだ。
目の前の石の椅子と対抗しているのか、いつもは四つ脚の椅子なのだが、まず座る部分の下のところが一本の太い筒状になるように蔓が編み上がっていく。かなり太い。
──どれだけ大きな椅子にするつもりですか、ローズさん!
そんな私の内心のツッコミをよそに、次に肘掛けが編み上がっていく。肘掛けには腕を置くのに邪魔にならない位置に、輝く大輪のバラが咲き乱れている。色とりどりのそれらは、まるで宝石のようだ。
そして背もたれ部分はローズの蔓の中でも特に細い部分を使って、紋様が編まれていく。私の錬金術師としてのメダリオンの図柄をあしらってくれているようだ。どんどん、どんどんと上へ上へと伸びていく背もたれ。それにともなって図柄も次々に追加されていく。
向かい合う2体のドラゴンの図柄。
カゲロの木の意匠。
私の錬成獣たちのデフォルメされた姿。
──あれはヒポポか。そこの部分はイブとタケノコアーミーズね。あ、ヒポポブラザーズも。ローズ、こんな意外な才能があったんだ。
そうして次々に私と関係のありそうな紋様を編み込みながら、背もたれは私の背を越える。さらに目の前の、最弱の七席の座る石の椅子の背もたれの高さも越えて、さらに少し伸びたところでようやく完成したようだ。
──ローズさん、気合い入りすぎ……
王座といっても過言では無いぐらいに立派なそれに、私は何でもない振りをしてマントを払うと、椅子に浅めに腰かける。
──折角の気合いの入ったローズの力作を、むげにしないようにしないと。私のために頑張ってくれたんだし。とはいえ立派過ぎて気が引ける……
「さて、話し合いを始めましょうか」
最弱の七席より立派なローズの椅子に腰掛け、私は朗らかにそう声をかけた。




