『最弱』の来襲
私たちは岩影の窪みに身を落ち着け、一息ついていた。セイルークがその身を盾にして風を防いでくれているおかげで、体感的には先ほどに比べだいぶ暖かい。
それでもまだ寒そうに見えるアーリ。私はスクロールを使って、まずいつものようにお茶をいれることにする。いれたお茶のカップを両手で抱えるようにして持ち、ゆっくりとお茶をすするアーリ。
──火を使うと、たぶん敵に見つかって襲って来るよね……
それじゃあ休憩にならないだろうからと、暖を取るようの焚き火の設置は諦める。次にここまで頑張ってくれたセイルークにも上級ポーションのご褒美をあげる。
「アーリ。防寒具の類いがあるから、使って」
私はドサドサとリュックサックから取り出した物をアーリに示す。
「──どうしましょう。あまり着込むと動きが阻害されてしまうので……」
「いいからいいから。寒そうだよ、アーリ」
私は先に自分の首に、取り出した防寒具の中からマフラーを選び巻き付けると、もう一本あったそれをやや強引にアーリの首にかける。
「ほら、こうやって巻いて結んでおけば、そう邪魔にならないでしょ?」
「──暖かい。これも魔導具ですか」
マフラーに鼻まで埋めるようにして、一呼吸おいたあと、目線だけ上向きにこちらを見ながらたずねてくるアーリ。
「そう、ほんのり発熱するようになってる。ここら辺も同じように処理してるから」
私は答えながらレッグウォーマーやアームウォーマーをとりわけ、アーリに差し出す。
今度は素直に受けとるアーリ。
二人して防寒具を着込んでいるときだった。
むくっとセイルークが首を持ち上げ、低い声で鳴き声をあげる。
警戒を促す声だ。
その声に機敏に反応するアーリ。
槍をつかみ、セイルークの背をかけ上る。
「ルスト師、来ます。あれは、魔族ですっ!」
上空を見上げたアーリが槍で指し示す先。そこには無数の配下を引き連れた『最弱の七席』と呼ばれる魔族の姿があった。




