マントと手袋!!
「ふぅ、金の抽出はこれで完了っと」
モンスター素材から全ての金の取り出しが終わった私は一息つく。
目の前には拳二つ分ぐらいの大きさの金の塊が鈍く光を反射していた。
気がつけば夜もすっかり更けている。
「あれ、シェルルールは……」
帰ったのかなと研究室を見回すと、なんと部屋の隅にいた。
「……もしかして、寝ちゃってる?」
机に突っ伏しているシェルルール。寝息が聞こえることからも、寝ているのは間違いないだろう。起こすべきか一瞬迷うも、リュックから予備のマントを取り出すと、その肩にそっとかけておく。
「まあ、そのうち起きるよね。へたに起こすのも憚られるし。それより、このまま本番の錬成といきますかねー」
悩ましい問題は先送りにするに限るとばかりに、私はそそくさと金塊の前に戻る。
ついでとばかりに携行食で手早く栄養補給を済ませると、竜泉石を取り出す。金塊の隣に隙間をあけて並べる。
「さてさて、次が問題だ。これまでにないぐらい大量の呪いを使うことになる予定だけど、果たしてうまくいくか……」
私は呟きながら、ゆっくりと右手の手袋を外す。
この手袋を作ってから随分と経った気がする。私の右手から漏れだし続けていた呪いをずっと溜め込んできた手袋。
そしてその溜め込んだ呪い自体が、今回の錬成のメイン素材となるというのは、どこか不思議な気分だ。
「どれぐらい溜まっているかな」
外した手袋をきれいに裏返す。手袋の内側に描いておいた《封印》のスクロールの上位版である《封呪》の魔導回路が表になるようして、金塊と竜泉石の間に慎重に手袋を置く。
「『展開』『展開』────『展開』」
次にスクロールをありったけ同時展開。
くるくると伸びたスクロールがいくつも私を中心に、旋回するように宙を舞う。
準備が全て整ったことを確認すると、握りしめていた右手をゆっくりと開いていく。
ぽこぽことあふれでる呪いに覆われすぐに黒くなる右手。その指先で、金塊と竜泉石に挟まれた封呪の魔導回路に触れると、設定しておいたキーワードを呟く。
「《限定解除》対象指定《純化》《封呪》」
手袋が、まるで繊維がほどけていくかのようにバラバラになっていく。
「さあ、解き放て」
次の瞬間、大量の呪いが吹き出し始めた。




