素材の錬成
「金の錬成って、つまりは錬金、ですよね?」
「うん?」
「それって錬金術の到達点、ですよね? ルスト師、凄いです! そんなことまで出来るなんて!」
「あっ、違う違う。シェルルール、ごめんね説明不足で。別に、鉛を金に変えるって訳じゃないんだ」
私は準備を進めながら、キラキラとした瞳でこちらを見つめるシェルルールの勘違いを訂正する。シェルルールが言っているのは物質そのものを変化させる錬成のことだろう。
──まあ、極少量であればそれも出来そうだけどね。大量に魔素を消費するだろうから、コスパが非常に悪そうだし、無難に出来ないって事にしておこう。
「一定量の金が欲しいだけなんで、一番簡単な方法でいくつもり。モンスターには一部、その体内に大量の金属を保有しているものがいるのは知ってるよね? とあるモンスターの素材から金を抽出するだけだよ」
「ああ。そうですよね、びっくりしました……って、あれ。それってモンスターの素材があれば金がいくらでも手にはいるんじゃありませんか?」
「まあ、そうだけど。でもモンスターにも限りがあるし」
「ですよね──」
「私もこれぐらいしか素材を持ってないしね」
錬成の準備を終えた私はそう応えながら手持ちの今回使うモンスター素材を全て取り出す。隣国ソトトに行ったときに手にいれたモンスター素材だ。どうやらあの国の飛行系モンスターの素材には、金の含有量が高い物が多いようだ。
──タウラの目を盗んでこっそり手にいれておいて良かった。特にあの変異種の素材は特に金の含有率が高いんだよな。不思議なことに。
「ひえっ! 凄い量です……」
私の出した物を見て、小さく悲鳴をあげるシェルルール。
「あー。途中で、もし疲れちゃったらシェルルールは離脱して良いからね?」
「──いえっ! 大丈夫です!」
唖然とした表情をきっと引き締め、答えるシェルルール。そうして私たちは早速作業に取りかかった。
◇◆
「すいま、せん……。も、もう無理──激しすぎ、です。こんなの、もう──」
荒い息をもらすシェルルール。
素材から金属を取り出すのは、ちょっと特殊な錬成となる。それも、どちらかと言うと、魔素の大量の消費による非常に力任せな作業なのだ。
その大量の魔素の消費と、枯渇した魔素をポーションによって回復させることの連続。
いつ果てるともないその反復に、シェルルールがついに音を上げてしまう。
──体内に満ちた魔素が一気に抜けていく虚脱感と、その生まれた空白が魔素によって再び満たされていく、一種の充足感。まあ、慣れないとこの正反対の感覚の反復は、なかなか辛いよね。体力がいくらポーションで回復するとはいえ、感覚的精神的な負荷のかかる作業だから。シェルルールは良く耐えた方だ。
「ありがとう、シェルルール。助かったよ。もう、離脱して休んでて」
「うぅ。ごめんなさい。そうさせていただきます……。あの、ルスト師はあとどれくらいされるんですか?」
「ああ。今ちょうど半分くらいだね。シェルルールのお陰でとても捗ったよ」
「──半分っ! ここから、同じだけを! お一人で……」
驚愕に見開かれた瞳でこちらを見つめるシェルルール。
しかし既に素材と向き合っていた私はそのシェルルールの視線に気がつくことなく、淡々と作業を再開していた。




