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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第六章

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アクター・カヘロネーの悩み

「ああ。カヘロネーも打ち合わせは抜け出してきたの?」

「私は誰かさんと違ってそんなことはしません。打ち合わせは先ほど終わりましたよ。そろそろ準備なので、呼びに来ました。──それに、あれからお話しできていませんでしたから」


 そういってくすくすと笑うアクター・カヘロネー。

 言われてみれば確かに真面目そうな彼女なら、抜け出したりはしないだろう。


 私は少し視線をそらして、セイルークにまたあとでねと鼻先をとんとんと叩く。一呼吸おいてから、アクター・カヘロネーの方を振り向く。


「騎士カリーン殿を含めて皆様、衣装の最終の確認に入られますよ」


 そういって私の全身、上から下へゆっくりと視線を動かしていくカヘロネー。

 私も不本意ながら、いつもより豪華で高そうな雰囲気の服を着ていた。


「ここ、毛羽立ってますね」


 そういって、すっと手を伸ばすと、私の衣装の一部を優しげな手つきで撫で付けるカヘロネー。


「え、ああ。さっきセイルークにポーションをあげるときかな。ありがとう、もう大丈夫っ」


 私が慌ててお礼をいうと、こてんを首を傾げるカヘロネー。しかしその視線は相変わらず私の服装をチェックしているようだ。


「ではこのボタンの曇りはセイルーク様の鼻息ですね。さあ、行きましょう。服飾担当の儀典官の方達がお待ちですから、磨いてもらいましょう」

「……はい。あ、ロアにも伝えないと……」

「ロア殿でしたら先ほどすでにお声がけされていて、お連れされてますから」


 にっこりと笑って伝えるカヘロネー。

 私には何故かそのカヘロネーの台詞が、捕獲されて連行済み、と聞こえて仕方なかった。


「あ、そういえばアロマカズラはちゃんと言うこときいたかな」


 連れだって歩きながら、私は話題を変えるべきだなと思って、蘇りし者を捕獲したときの事をたずねる。


「ええ、とても素敵な錬成獣ですね、アロマカズラさん。あんな気遣いのできる錬成獣さんは初めてでした。ルストの調練は素晴らしいですね」

「いや、そんな事はないよ。まあ、かなり知能は高いんだけど、それも生まれつきなので」

「なるほど。ではルストが素晴らしい錬成獣としてお作りになった、という訳ですね」

「うーん、そうなるのかな? まあ、称賛自体はアロマカズラに譲らせて下さい。アロマカズラにカヘロネーが誉めてたよと、あとで伝えておくから」


 私も照れながらも、自分の錬成獣が誉められるのは素直に嬉しい。

 そんな事を話していると、ポツリとカヘロネーがこぼす。


「そういえば今日は、捕まえた蘇りし者の処刑も行われるんですよね」

「……そう、みたいだね。でも何せ、カルザート王の命を奪った者の一人ですし」

「ええ、そうですね。すいません、こんな事言ってしまって。忘れて下さい」


 そういってにっこりと微笑むカヘロネー。しかしその笑みは先ほどまでのとはどこか違っていた。


 ──カヘロネーから見ると、形は違えど、蘇りし者たちも加護を使う同じアクターってことだもんな。複雑な感情を抱くのも仕方ないだろうけど……


 結局蘇りし者達五人のうち捕まえたのは、一人だけだった。

 ガーンはロアの槍で止めを刺されて、結局ポイントとカルザート王の亡骸を奪って消えてしまった。

 執事に擬態していた人物はカリーンが勢い余ってバラバラにしてしまったらしい。

 商会の初老のご婦人といった風情の蘇りし者もカリーンが倒している。

 村娘の格好をしていた虫を操っていた蘇りし者はアーリに倒されている。


 ──こうやって考えるとカリーン、大活躍だよな。道理で機嫌が良いわけだ。


 会話が途切れたまま、私たちは儀典官の待つ部屋へと到着した。





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