相談に乗ってみよう!!
私は食べ終わった食器をトレイに戻すと、そっと地面に置く。照明の魔導具の光に浮かび上がる、アーリの顔を覆う布。
「私たち姉妹が異能持ちであることは、お気づきですか?」とアーリ。
「多分、そうだとは思ってましたよ。初めて野営地の外で待ち伏せされた時に。ロアは遠視か透視。そして力量の把握が的確な事から、アーリはそれに類する異能かと思っていました」
「流石ですね。ほぼ正解です。ロアはおっしゃる通り、遠視と透視の二つの魔眼の異能を。私が限定的ですが未来視の魔眼の異能を持っております」
「なるほど。素晴らしい才能ですね。魔眼持ちは、ただでさえ稀有な存在なのに。それを二つも持っているロア、そして、未来視の魔眼ですか。伝説上の存在かと思っていました」と私は感嘆のため息をつく。
「私の未来視は、そこまで大したものではありませんよ。未来の闘争の可能性に反応して数秒先が見えることがある、という限定的なものです」
「いやいや、それは十分すごいかと。ああ、それだと、もしかして私の戦闘スタイルがばれてしまっていたりしますかね」
無言で首をかしげるアーリ。顔の布越しでも意味深に微笑んでいる様子が容易に想像できる。
一つ、咳払いをして続ける。
「余計なことでしたね。それより、良いのですか? 魔眼についてそこまで詳しく話されてしまって。特に発動条件等は知られない方がよろしいですよ」とアーリに諭すように伝える。
「ここでのルスト師の行いを見ての、私の判断です。私にとって家族と呼べるのは、妹を除けばこの野営地でともに開拓に命をかけている仲間達だけなのです。それをルスト師はいつも助けてくださいました。その信頼に基づいて、お話しさせて頂いているとお受け取りください」
「……わかりました」と厳粛な顔を作って、私はその思いに応えようと返事をする。
「そして相談というのが、これなのです」とアーリは自らの顔面を覆う布に触りながら。
「封印系の魔導具、ですか?」と私はなんとなく感じられる魔素の反応からそう聞いてみる。
「っ! そうです。ルスト師は、何でもお見通しですね。特注の魔導具で、この世に二枚しかない品です。それを見ただけで当ててしまうとは」
「いや、そんな大したことではないですよ。半分は勘ですよ。それで修繕をご希望ですか?」
首を横に振るアーリ。
「これは異能の暴走を抑えるための魔導具なのですが、私もロアも段々と抑えが効かなくなってきているのです」と、悩ましげに話すアーリ。
「ほう。修繕ではないという事は、いまだに異能が成長しているのですね。わかりました。新しい物を二つ、何か考えて見ましょう。少しお時間はかかるかもしれません」
「本当ですかっ! ありがとうございます。この礼は必ずっ」一度立ち上がり、片膝をつくアーリ。
「お立ちください。アーリが言っていたことですよ」
「何か言いましたか?」
「ええ。ともに開拓に命をかけるこの野営地の仲間は、家族だと。であれば私も、家族たるアーリとロアの頼みであれば微力を尽くしますとも。さてさて、ご馳走さまでした。私はこれで失礼します。また明日にでも、ロアも交え、その布の魔導具を見させていただけたらと思います」と、私は魔晶石の作成に戻ろうと、その場を後にした。




