四人目の蘇りし者
「カリーン……、良かった、いた。……はぁ、はぁ」
息切れしてドアを開けた所で膝に手をつき息つく私。そのうしろ、ドアの入り口から、アーリが私の肩に両手をおくと、伸びあがるようにして顔を出す。
私の肩越しに、アーリがカリーンへと話しかける。
「カリーン様、アーリです」
「アーリ! 良かった。お前なら大丈夫だと信じていたぞ。無事に合流出来たのだな。ルスト、それにロア、ありがとう」
私と、ドアの外で警戒中のロアへと感謝を告げるカリーン。
私はその間に、邪魔にならないようによろよろとドアの内側に入ると、ぷるぷるする手で何とかスタミナポーションを取り出す。
一気に、飲み干す。
──はあ、全力で階段は、きつい……。
「だいぶ苦労したようだな。その損傷、打撃系の攻撃か」
「はい。怪我自体はルスト師のポーションのおかげで全快しております。それよりもカリーン様。リリー殿下のそばに敵がいるとロアが。リリー殿下は、今どこに?」
「っ! だとすると、あの執事服だなっ。今は謁見中のはずだ。──仕方ない、御前を騒がすことになるが突っ込むぞ!」
「はっ。お供します!」
ドアを開け放ち、駆け出すカリーン。アーリもそれに追従する。
ポーションのおかげでようやく息の整った私も、慌てて彼女達を追いかけようと部屋の外へ。
ドアの外では、ロアが私のことを待っていてくれていた。
廊下の先にみえるカリーンとアーリの背を追って、走り出す。
「すぐそこ」
油断なく周囲を警戒し私と並走しながら、ロアが告げる。どうやら気を使ってくれているようだ。
「ありがと」
「うん。──そこ、左。──正面。そこのドア」
たどり着いたそこは、すでに戦場だった。
カリーンが、執事服の男性と切り結んでいる。
リリー殿下とアーリが背にして守っている男性の姿もある。あれはカルザート王だろう。
カリーンの振り回す大剣で室内に強風が吹き荒れる。
それほどの威力のある斬撃を執事服の男性は素手でさばいているようだ。
切り結んでいたカリーンと執事服の男性が一度距離を取る。
首をポキポキと鳴らす仕草をする執事服。
「ほぉ、やるなぁ、お前。良かったら名前を教えてくれ。顔は見たことあるんだが思い出せなくてなあ」
余裕を見せてそんなことを聞いているカリーン。
「グスタフ。だが、この顔は借り物だ」
グスタフと名乗った蘇りし者が大きく右肩を回して関節を鳴らす。すると次の瞬間、グスタフの顔がグニグニと波打つように動く。
その蠕動がおさまると、そこには全くの別人の顔があった。
「ほぉ、関節を鳴らして体を変える加護か。
なんだ、お前達蘇りし者ってのは、みんな音で加護を操るんだなぁ」
なぜかうきうきした顔でそんな事を言うカリーン。私は二人のやり取りを注視しながらアーリと合流しようとそろそろと部屋の壁沿いに移動を開始する。
「グスタフ、お前もっと強くなれるんだろ?」
「ふん」
再び切り結び始めるカリーンとグスタフ。グスタフの両手はよく見ると指一つ一つが刃物のように変化している。
その十本の刃の繊細な動きで、暴力そのものといったカリーンの粗暴な斬撃を、巧みにいなしているグスタフ。
そんなグスタフに挑発をかけるカリーン。
──なんだ、隙を作らせるための挑発……じゃないな。ただ強敵と戦うのが楽しいってだけの顔だ。全く。カリーンのやつ、王と王女を守るのを私たちに丸投げできるとか思っているにちがいない。
「ちっ。ご要望に応えてやる」
やや押されぎみだったグスタフが、カリーンの挑発に乗るかのように答える。
そして、刃物になった指の関節をボキッボキッとならし始めるグスタフ。
次の瞬間、その体が、大きく膨らみ始めた。




