side カリーン 6
王城の門は、熱気で沸き立っていた。
私はリリー殿下を供って門の前に来ると騎乗したまま大声で名乗りをあげる。
「我が名はカリーン=アドミラル。アドミラル領、領主にして、王家に剣を捧げし騎士なり! 王都を襲う敵を討ち滅ぼさんと剣をとりて帰還した、リリエンタール=カルザート殿下に随伴せり! 開門を請うっ!」
私の名乗りを聞いて、王城の門に詰めていた兵や騎士たちから更なる歓声が上がる。
「第二王女殿下っ!」「王女殿下、万歳っ」「リリー殿下のご帰還だっ」「開門だっ! 開門しろっ!」
「おい、あの殿下や魔族殺し殿が乗っている騎獣って?」「ああ、間違いない。あいつら、救国の英雄殿の錬成獣だ」「それはもう古い古い。今じゃ、アドミラルの二頭殺し、てな。もっぱらの噂なんだぜ」
戦闘後で気分が高揚しているのか、はたまた危機が去ったという安堵感からか、門の上に立ち並ぶ兵達の口がとても軽い様子だ。
──リリー殿下を称賛する歓声が多い。やはり兵たちからの人気は変わらずに高いとみえる。リリー殿下の帰還の形としてはほぼほぼベストだったな。それにしてもヒポポブラザーズ達がルストの錬成獣とまで認知されているのか。ルストの奴、新しい二つ名か。『アドミラルの二頭殺し』、ね。合流したら教えてやろう。
私は内心で大笑いしながら、表情に一切出さず冷徹な顔を維持し、開門していく門へとヒポポブラザーズ達を進める。
隣では最初はビクッとしたリリー殿下が、今では笑みを浮かべて兵達の歓声に手を振り返している。
落とし格子が巻き上げられ、門が開く。
ビシッと隊列を組んだ兵たちに迎えられ、シャリルから降りるリリー殿下。それに、私も続く。
「殿下、王がお待ちです。御案内致します」
リリー殿下の周囲を取り囲む兵を掻き分けるようにして、歩み出てきたのは執事服の男性だ。
リリー殿下は、歩みを進めながらその執事服の男性と話している。
──こちらは謁見の間では無く、確か王族専用の談話室がある場所だったか。内々の話し、という形をとるつもりかな、王は。
私は何度か訪れたことのある経験から、そう推察する。
「カリーン=アドミラル様には、いったんこちらの控えの間にてお待ち頂きます」
「き、騎士カリーンはここまでわたくしを手助けしてくれた功労者、です」
「もちろんです。されどこれは王からのご下命。騎士カリーン殿であればお待ちいただくことに否はないかと……」
足を止め、ちらりと私の方を向いて、同意を求めてくる執事服の男性。
「──もちろんですとも」
私はここは従順であるべきと、軽く執事服の男性に頷く。
不安げな表情をするリリー殿下を伴い、私の返事を受けて執事服の男性が去っていく。
──はて、彼の名前は何だったか。顔は見かけたことはあるが……
そんなことを考えながら、私は言われた通りに控えの間へと入る。
しかし一息つく間もなく、すぐに私が入ったばかりのドアが開けられる。
「──早いな、何かあったのか?」
私はドアの方を振り返りながら、そうたずねる。
そこに立っていたのは、よく見知った顔。息切れしたルストだった。




