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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第一章

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商機は積極的に掴みにいこう!!

 カリーンに挨拶がしたいというタウラを送って行った後、私は野営地の広場に来ていた。


 カリーンからは、トマ村のザーレ達やタウラの歓迎に皆で食事をするからと誘われたが、遠慮させて貰った。

 ザーレ達は翌日には、ここを出発するらしく。それまでに済ませておきたかったのだ。

 カゲロの実の魔晶石への錬成を。


 ──今が商機な気がしてならないんだよね。急いでやっておく価値はあるはず。


 そんなことを思いながら広場へ。

 小山の様に積まれたカゲロの実が、いくつも見える。

 そのうちの一つを手に取り、沈み始めた日の光にかざす。


「さて、始めますか」


 私はスクロールを展開した。


 ◆◇


 錬成を始めて数時間。

 さすがにそろそろ喉が乾いてきた。


 あたりは完全に暗くなり、すっかり夜だ。ぼんやりと光るスクロールと、照明の魔導具の光に照らされ、錬成が完了した分の魔晶石の小山が光を反射している。


「かなり終わった、かな」私は軽く咳払いしながら呟く。


「ルスト師」とそこへ私を呼ぶ声。


 ちらりと見るとアーリの姿があった。


「食べ物と飲み物持って来ました。休憩されてはいかがですか」とトレイに食べ物を載せ、両手で持ったアーリ。

 提案のようで、その声は反論を許さない断固たるものだった。


「ああ、ありがとう。ちょうど喉が乾いていたんだ。目処もたったし、ありがたく頂くよ」


 私はトレイを受けとると、そのまま、立って食べようとする。


「ルスト師」


「……はい」


 さすがに立ち食いはあれかと、座るところを探してキョロキョロと辺りを見回す。


「良ければすぐそこに私たちの天幕があります。椅子を持ってきましょう」とアーリ。


「何から何まで、申し訳ない」と私は思わず謝ってしまう。


「いえ、大したことではありません」と応え、歩き出すアーリ。


 私もその後を追う。

 すぐさま見えてくるアーリ達の天幕。

 アーリは中に入るとすぐさま出てくる。その手には二脚の椅子。


 木で組まれ、座るところには布が張られた背もたれのない椅子。最小限の木材だけで組まれたそれは、木材の採れない辺境ではなかなか貴重な品のはずだ。


 天幕の前に、椅子を並べる。

 ありがたく座らせてもらうと、早速食事に手をつける。


 まずはマグの飲み物をあおる。

 エールだ。

 長時間酷使した喉に冷えたエールが染み渡る。

 野趣の強い香りが鼻へ抜ける。


 思わずもれる声。


「今日は歓迎の宴ということで、リットナーのとっておき、だそうですよ。ここに来てすぐに試行錯誤し始めたもので、ついに出来た自信作、と言っていました」とアーリ。


「確かに美味い。エールでは感じたことのない香りだ。もしかして植物系のモンスターの食材が使われているのかな。それにしてもあの人、食料庫の管理だけじゃなく酒造りもしているんだ」


「確かに、リットナーは大麦のモンスターがたまにふらふらと迷い込んでくると、嬉々として狩りに行っていましたね」とアーリ。


 私はそれに応えながら、食事も始める。

 ツインラインホーンの肉のステーキだ。こちらは何度か食事に出てきていたので今では食べなれてはきた。しかし、いつ食べても美味しい。さっぱりとした赤身肉だが、筋もほとんどなく柔らかい。

 エールとの相性もいいのだろう、あっという間に食べ終えてしまう。

 私が食事を終えた頃合いで、隣に座ったアーリが口を開く。


「ルスト師、実は相談したいことがあったんです」とアーリ。


「何か私で力になれることがあれば。聞かせて下さい」


 そうして、その口から語られたのは、アーリとロアについての悩みだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] エールとの哀傷もいいのだろう 相性が哀傷と誤変換なんて、どんな悲しい文章を以前に書いたのだろうか
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