side アーリ 14
全身を駆け巡る、高濃度の魔素。本日二度目のそれは、今回の方は特に私の体に劇的な変化をもたらします。
割れていた膝の皿は復活し、再び足が曲がるようになります。
私は、確かめる時間を惜しんで一気に立ち上がる動作へ移ります。
折れて明後日の方向を向いていた指は元通りに。その指で走り出した動きのままに、槍を拾い上げます。
ちぎれた耳も生えて来ます。
槍を構え加速しながら、明瞭に聞こえるようになった世界の音に耳を澄ませます。
空気を切り裂く投擲音。
先ほどまで私が寝ていた場所に投げ込まれた蟻玉の音です。
私はその音を後に残して、加速を続けます。
蟻人を最短距離で、迂回するように。
村娘の姿をした敵の真横に向かって。
その間も、蟻玉の投擲が次から次へと迫ります。
そのすべてを置き去りにして駆け抜けます。すると、そこにはこちらを向きかけた村娘の顔がありました。
その首を勢いのままに槍で、一突きにします。
深紅の光もまとわせていない単なる槍の一突き。
しかしそれは意外なことに、簡単に村娘の首を貫きました。
私の両手に伝わる、確かな手応え。
「うげぇ。やられちゃったよ、これ。よくわかったねぇ。蟻人くんが歩けないの。まあでも重畳重畳。これは回収させてもらったからねぇ。うん? 反応薄いなぁ。あれぇ、もしかして知らないみたいだね。これだよ、これ。この世界にこぼれ落ちた力の欠片だよ。これがあったからお嬢さんもステータスの力に手が届いちゃったみたいだしねぇ。うわっ、しゃべり辛くなってきたねぇ」
真横から喉を貫かれたわりにペラペラとよくしゃべる村娘の姿をした敵でしたが、ようやくそこで息が切れたのか、静かになります。ぐったりと崩れ落ちる村娘。
そのタイミングで蟻人と呼んでいた人型の敵も、その他の浄光をまとった蟻も、すべてが溶けるようにぐずぐずと崩れて消えていきます。
私はそれを見届けると、安堵のため息がてら、口に残っていたガラス片を吐き出します。
「はあぁー。何とか、倒せました。最後までよくわからないことばかり言っていました。回収したとかいう力の欠片ってなんの事でしょう……」
私はもしやと思い、試しに再び槍に深紅の光をまとわせてみます。
これまで通り、光をまとう槍先。
「これではない、みたいですね」
浄光の青白い光が消えて真っ暗になっていた地下室を、深紅の光が煌々と照らし出します。
「っ!」
そこで私ははっとします。思わず魔眼たる左目を確認しようと、槍の穂先に写してみます。
「目の色が……」
深紅の光に照らし出されて判然としませんが左右の目の色がともに青色──私の生来の目の色に変化しているようでした。




