side アーリ 11
巨大ダンゴムシの体が深紅の光で弾けました。その巨体が占めていた穴の先に、王城の地下室らしきものが見えます。
「どうやら、ここが洞窟の終わりのようですね。巨大ダンゴムシは掘り終わって待機していたというところかしら」
私は洞窟から王城の地下部分に出ようと歩いていきます。巨大ダンゴムシから漏れでた体液を出来るだけ踏まないように気をつけながら。不思議とそれらは青白い光を発していません。どちらかといえば、うっすらと赤い光を帯びているようにすら見えます。
不思議に思いながらも、私は王城の地下室の壁に開いた大穴へとたどり着きます。その大穴から、段差を飛び降りるようにして地下室に降り立ちます。
その時でした。
「まさか魔族以外に、ステータスの力を使える奴がいるとはねぇ。これは重畳重畳。それとも何かい、お嬢さんはそんな見た目をしていて実は魔族とか? そしたら、一応はおいらともお仲間なんだけどねぇ。まあ、そんなことはなさそうだねぇ」
降り立った私へと、急に声がかけられます。
──未来視の魔眼が発動しませんでした。敵意が無い、ということは……考えにくいですね。
声の先にいたのは、若い女性。地下室から上る階段に腰かけています。
身にまとっているのは、村娘のような平凡な服装。セミロングに切られた髪に縁取られた顔も純朴な少女といった面持ちです。
しかし、その見開かれた目は爛々と強烈に輝き、ニヒルに歪められた口元と相まって、ただの村娘といった雰囲気は微塵もありません。
ロングスカートに包まれた脚は大股開きで階段に腰かけ、左手の親指と薬指で作った輪っかを通してこちらをじっと観察しているようです。
──おかしいですね。あれは、敵のはずです。浄光をまとった虫達の創り手──加護持ちの蘇りし者でしょう。未来視の中で私と戦っていたのが、見えたのに……
私は最大限の警戒をもって槍を片手で構えると、再び空中へと伸ばした反対の手の指先を動かします。
再び槍先に宿る深紅の光。
「なんで自分の未来視の魔眼が発動しないか、お嬢さんは随分と不思議のようだねぇ。それでもまあ、スキルを使ってくるっていうのなら、おいらの相手に不足なしってね。まったく、重畳重畳」
そう言いながら、村娘の姿をした敵は指を咥え、甲高い指笛を鳴らし始めます。
次の瞬間でした。
地下室の壁が、床が、ぼこぼこと膨らんだかと思うと、それらを突き破るようにして青白く光る虫達が現れました。




