side カリーン 1
「ヒポポブラザーズ! ぜんたいっ、とまれっ!」
周囲に敵影が無いことを確認すると、ヒポポブラザーズに騎乗した私は、号令をかけ、いったん停止する。王城まではあと少しの地点の、小さな広場だ。
「リリー殿下、殿下はいかがされますか? このまま私と一緒に乗っていかれますか」
私は振り返り、背後からしがみついているリリー殿下へと確認する。
私よりもかなり身長のあるリリー殿下が子供の様に背を丸め必死に腕を回して来ていて、本当のところ、かなり動きづらい。
──私にもリリー殿下くらいの背があればな……。本当に剣士として恵まれた体躯だ。それだけに惜しいな。先ほどアーリといた時にちらりと見えた剣の冴えは、前のまま。あとは心の問題だが、それが一番、難しい。
内心、そんな事を考えながらリリー殿下からの返事を待つ。周囲ではドーン、ドーンという音が響く。それは王城に近づくにつれ、どんどん大きくなっていた。
「ええっと……」
「殿下をお守りしながら剣を振るうこと、やぶさかではありません」
私は愛用の漆黒の大剣を掲げ、告げる。
──やはり、ダメか。剣姫とうたわれたその勇姿を見せてリリー殿下が王城に乗り込み、自らの剣を王国に捧げている姿を示せるのが、今後の事を考慮すると最善だったが。
「──それでは殿下。そのままでは私も少々動きづらい。前側に移動してこの子にしがみついていて頂けますか」
そこではっとした表情を浮かべるリリー殿下。背を伸ばし、キョロキョロと周囲にいるヒポポブラザーズたちを見回したあと、今度はこちらを上から覗き込むようにして見てくる。
「騎士カリーン。わたくしも、戦って、いいの?」
「それをお決めになるのは殿下です」
私の言葉にじっと唇を噛みしめ下を向くリリー殿下。
「わたくしも、戦いたいと思います」
──ほうっ。王族としての気骨はお持ちのようですね。やはり、おもり役になってしまっていたゾロアーとリスミストを理由をつけて残してきたのは正解か。アーリ、お前が身を呈したかい、あったぞ。どうかルスト達が行くまで無事でいてくれ。
「わかりました。リリー殿下。それでは殿下はその子に騎乗下さい。王国に捧げし我が大剣を持って、私は御身の守りを勤めます。殿下は心ゆくまでその剣を王国の敵にお振るい下さい」
私はヒポポブラザーズのうちの一体、たしかロアがシャリルと名付けて可愛がっている子をリリー殿下へ示す。
「シャリル。リリー殿下をのせて」
「ぶもぶも」
「あなた、シャリルというのね。よろしくね、シャリル」
「ぶもー」
私の背後から降り、どうやら無事に騎乗できた様子のリリー殿下を確認すると私は再び大剣を掲げる。
「それでは王城に突撃する。ヒポポブラザーズたちよ、続け!」
周囲に響くヒポポブラザーズたちの雄叫び。それに混じるリリー殿下の小さくてもしっかりとした叫び。
私たちは王城へむけ、なだれ込むように突撃を開始した。




