指揮と落下!
私の横を通り抜けていく一陣の風。私の後ろにいたはずのカリーンが真横を駆け抜けていく際に巻き起こったものだ。
「あ、こら、カリーン!」
私が顕現させたヒポポブラザーズの一体に飛び乗り、そのまま巨大てんとう虫へと突撃していくカリーン。
楽しげに雄叫びをあげて高く剣を掲げている姿はまるで子供のようだ。
鞍のついてないヒポポブラザーズに、カリーンは脚の力だけで器用に自分の体を固定している。
しかし勝手に乗っただけなので、当然ヒポポブラザーズはカリーンの言うことを、すぐにはきかず。
騎乗中のヒポポブラザーズの背から落ちることはなさそうだが、上手く攻撃にうつれない様子だ。
今も、カリーンが剣を振って巨大てんとう虫に切りつけようとしたタイミングで、ヒポポブラザーズは後ろ足で立ち上がり、前足で蹴りを放とうとしている。
当然、カリーンの攻撃は空振り。
ヒポポブラザーズも騎乗したカリーンの重さ分、動きが鈍り、前蹴りの威力が落ちている。
その分、他のヒポポブラザーズ達が上手くフォローしてくれているようだ。
──あちゃあ。でも仕方ない、あの子にしてみたら、突然、誰かが乗ってきた訳だし。みな、ナイス。
「おーい、ルスト~」
そこへ届く、カリーンの声。地声の大きさもあって戦場なのに良く聞こえてくる。
──はいはい。まったく……
私はヒポポブラザーズ達を顕現している複合魔法陣を形成しているスクロール群の一つ、特に制御を記述している部分が手元に来るように魔法陣を回す。
次々に目の前を通り過ぎていくスクロール。
「これか」
ピタリとスクロールの移動を止めると、手のひらを当て認証させる。
「《権限変更》カリーン・アドミラル《権限付与》簡易権限、ヒポポブラザーズ」
音声操作でカリーンに簡易的な権限を与え、ヒポポブラザーズ達がカリーンの言うことを聞くように設定する。
「カリーン、音声指示のみっ!」
私は両手を口の横で構えてカリーンに向かって叫ぶ。
「さすがルストっ! 話がわかるな! 愛してるっ!」
「はいはい」
そこからのカリーンの活躍は素晴らしかった。戦闘についての天性の勘のなせる技に、指揮官としての潤沢な経験が合わさったのだろう。
ヒポポブラザーズ達をまるで一筋の川の流れのように指揮して、巨大てんとう虫へ寄せては引いての巧みな運用。
気がつけば巨大てんとう虫を討伐していた。
ほっとしたのもつかの間、私はアーリが未来視でみたはずの未来について尋ねようと後方を振り替える。
その時私の目に写ったのは、リリー殿下を突き飛ばしたアーリがちょうど穴へと落ちていく姿だった。




