sideアーリ 7
指先に触れる、ポーションの瓶の冷たい感触。
震えだした指先に力をこめ、私は瓶の蓋を開けます。
こぼさないように慎重に口許へと運んだポーションの瓶。それをゆっくりと傾けていきます。
その間も体の中心から発する痛みで、全身が震え続けます。
ぶるぶるとした震えのせいで、口許から離れそうになるポーションの瓶。私は思わず槍を手放すと、空いた両手で瓶を抑えるようにして持ちます。手放した槍が、地面へと倒れ軽い音が洞窟に響きわたります。
そしてついに唇に触れた、ひんやりとしたポーションの液体。
その一部は唇の端からもれて、つーと、顎へとしたたっていきます。
一口。
冷たいはずのポーションが喉をとおります。爽やかな爽快感をあとに残して、液体が体内へと入るにつれて、体の中心から一気に暖かみを帯びていきます。
濃厚といってもいいぐらい高濃度に濃縮されたポーションの魔素が、私の体のなかでまるで花開くように一気に全身へと巡っていくのを感じます。
「はぁっ──」
痛みが一気にひき、思わず漏れる安堵のため息。
顎から伝わったポーションのしずくが数滴、槍の穂先へと滴っています。
一瞬放念していた私はさっと口許を拭うと、貴重なポーションをこれ以上こぼさないように、急いで瓶に蓋をします。
「──ルスト師、助かりました」
私は握ったままのポーションの瓶に額をつけ、虚空に向けて感謝の言葉を漏らします。
たまたまルスト師から渡されたポーションがあった幸運。そしてあれほどの落下の衝撃でもひび一つない、ルスト師作成の瓶の強度への感謝。
我ながら祈りのしぐさみたい、と少し可笑しくなって笑みをこぼしながら、ポーションを再び懐へとしまいこみます。
「救いが人におよぼす影響、ですか。これはタウラが敬虔なアレイスラ教の信徒になるのも、わからなくないですね……」
目の前の地面から、槍を拾い上げます。
「あら?」
私は使いなれたはずの槍から、わずかな違和感を感じました。




