sideアーリ 6
落下する私の目の前を過ぎていく、土の壁。
そこで再び発動する、未来視の魔眼の映像。
周囲の状況を把握します。
そこからのとっさの判断で、空中で私は手にした槍をまっすぐ真横に突きだします。
──届いた!
土の壁に槍の穂先が、触れます。
まるで堅く圧縮された土壁に触れた時のような、硬質な感触。それは縦穴が崩れないように押し固めたかのような堅さです。
そして足場がない中での腕の力だけでの刺突ということもあり、槍先は跳ね返されてしまいます。
──想定内、です!
刺突の反作用で、私の体はくるりと回転。
落下軌道も変わります。
私の落ちていく縦穴の反対側の壁──軌道が変わったことで徐々に近づいていくそこに蠢く青白い影。
先ほど地上で見かけた青白く光るダンゴムシが、びっしりと壁に張り付いています。
斜め下に向けた槍を、落下速度を乗せてそのダンゴムシへと突き刺そうと構えます。
両手に伝わってくる、痺れんばかりの衝撃。
槍の刺さったダンゴムシは一瞬で刺した部分から引きちぎれ、青色の体液が飛び散ります。
しかしそのすぐ下にいたダンゴムシに再び槍が刺さります。
そうして無数の壁に張り付いていたダンゴムシを槍で引きちぎるようにして、私は自分の落ちていく速度を減らして行きます。
縦穴の終わりが見えてきました。
──この先が、例の巨大ダンゴムシの通った穴っ!
青白く光る液体を無数に浴びた槍の放つ、うっすらとした光に照らされて一瞬見えたのは、かなり勾配のある斜めの穴。
その穴の直径は、私が先ほどまで落下してきたものの軽く数倍はありそうです。
すぐにその斜めの床が迫ってきます。私は槍を抱え込むように体を丸め、転がるようにして着地します。
「ぐぅっ!」
そのまま落下の勢いをできるだけ殺そうと斜めの床を転がっていきます。
幸いなことに不自然なほど滑らかに形成されている急勾配の斜めの床は、全身へのダメージを最小限にとどめてくれます。
──っあぁ! 止まり、ません……!
激しく回転する視界の中、いくつもの穴が交差しているのがちらりと見えます。
──あの巨大ダンゴムシが……複数、いるかしら。もしくは何度も行き来して……
意識がそんなことを考えていると、どんっという衝撃とともに、ようやく体の回転が止まります。
叩きつけられる背中。
そしてはしる激痛。
私は思わずその場で激しく咳き込みます。
肺から吐きだした血が、抱えたままの槍にベッタリとかかります。
しばらくむせていると、何かが懐から地面へと落ちて行きます。それは先ほどルスト師から頂いたポーションの瓶。
中身は、ほとんど残っています。
ルスト師が覆い被さって庇っていた女性に数滴振りかけただけで、その女性はすっかり回復してしまったので。
うっすらとした光のなかでかろうじて見えるその瓶に向かって、私はよろよろと手を伸ばしました。
コミカライズ第8話②が更新されております!
第8話②で描かれているsideアーリは、書籍用に追加した部分のコミカライズになります~。
ロアが美味しそうに食事していますので、是非是非ご覧下さい!




