懐かしい人に挨拶しよう!!
「来た」とロア。
何故かアーリ達と一緒に野営地の入り口で待機するようにカリーンに言われ、私はヒポポの体の上でのんびり日向ぼっこをしていた。
「こちらも見えました。一人、お強い方がいますね」とアーリ。
今日は隣の領地との初の魔晶石の取引だ。隣の領主との交渉は完全にカリーン任せで、取引の詳細は知らない。それでもカリーン曰く、何枚も切り札があるような取引で楽勝過ぎてつまらなかった、らしい。
材料となるカゲロの実の調達業務は勿論、野営地までの運搬、その後の魔晶石の輸送、国内の流通ルートに乗せるまで、全て向こう持ち。めんどくさい部分が完全にアウトソーシングされていて、実質、私がカゲロの実を魔晶石に錬成するだけでがっぽり儲かる、らしい。
しかも、魔晶石に錬成する量は下限も上限も規制無し。基本的には私の都合で決めてしまえるのだ。生産量に大きく増減が出るときは、事前に言うようにはカリーンに釘を刺されはしたが。
よくぞ、ここまでの条件をもぎ取ったなと、皆、感心していた。
私もヒポポの上で大きく伸びをすると、ひらりと飛び降りる。そのまま待っていると、何匹も連なるラバの群れが見えてくる。荷車等はひいていないようだ。ラバの体の両側に大きなカゴがついている。
辺境の悪路、というほどの道もないので、車輪で進むのは難しい。最善の方法だろう。
──これは今後のことも考えると、道の整備の優先順位を高くする必要があるかもな。カリーンの判断次第だけど。
リソースの限られた辺境の開拓事業では、優先順位を決めるにはかなり高度な判断が求められる。政治的経済的な要因への配慮も、重要。私は難しい決定は、責任者であり上司たるカリーンに一任しようと心に決め、目の前の事に集中することにした。
──ケガしている人がいるな。何かに襲われたか。ただ、被害は少なそうだ。撃退したのかな。
先頭でラバの群れを率いていた人物がホコリよけのフードを外す。それは壮年の男性、トマ村のザーレだった。
「ザーレさん! お久しぶりです」
「あんたはっ! いや、失礼。ルスト師。この度は取引を快く受けて下さり──」と改まって挨拶をしてくるザーレ。
「無理なさらなくても、前のように話してくれても良いですよ。それより怪我人がいますね。良ければ治療しましょう」と私は苦笑して伝える。
「あんたは本当にお人好しだなっ! いや、すまない。治療は助かる。お願いする」とザーレ。
見たところ、大きな怪我人はいない。私は暇な間に作りおきしていた、効果はほどほどだが汎用性の高いポーションをリュックサックから取り出すと、次々に治療していく。
怪我人のわりに怪我をしたラバが見当たらない。
──ああ、カゲロの実が溢れんばかりにラバに積まれている。何頭か処分せざるをえなかったのか。
と、察してようやく一団の最後尾が到着する。最後尾には、どこかで見た青色の神官服を着た銀髪の女性。前に毒で倒れていたのを助けた、タウラの姿があった。




