ナイフとフォーク?
──あれ、方向が違わないか?
入り口まで案内してくれるというシスターについて早足で歩きながら、私はふとそんなことを思う。
細かい教会内部の道順は当然知らない。
しかし前にセイルークに乗って教会を上空から眺めた時の記憶はある。それと、その時案内されたカヘロネーの私室の場所。くわえてカヘロネーと一緒に教会内を歩いたここ数回の記憶。
それを頭のなかで組み合わせながら、視線だけで周囲を確認する。
──やっぱり。出口から離れている気がする。建物の裏手側に向かってる?
「シスター、王城の様子は何か聞いていますか!?」
私は少しづつ前を行くシスターと距離をあけながら、質問する。
「──戦闘が、起きているようです」
「そうですか。まだ制圧されていないんですね。王城にあるポイントはまだ無事ですか」
「……何の事ですか?」
私のセリフに、ピタリ歩みを止めるシスター。私もそれに合わせ、足を止める。
「あれ、シスター。ここは厨房ですよね。確か、入り口まで案内してもらえるのでは? シスター?」
「……もういい。ここで死んで下さい」
その声とともに、ばっとシスター服の袖をはねのけ、両腕を掲げるように広げる動きをする女性。
その手からきらめく物が、いくつもこちらへと飛んでくる。
「《展開》《顕現》アロマカズラ!」
私はこっそり準備していたスクロールを発動させる。スクロールから部分顕現したアロマカズラの蔦が溢れ出す。
ローズに比べてかげが薄いアロマカズラだが、その能力は優秀だ。
その百の効果を持つ香りは汎用性が高く、そして何よりもローズより細かい仕事が得意なのだ。
ローズが剛とすれば、アロマカズラは柔。
力任せなところがあるローズに比べて、アロマカズラの繊細さは特に対人の時はありがたい資質だ。
──モンスターだったらローズの蔦がズタズタにしちゃってもまあ、仕方ない時もあるけど、人相手に流石にそれは、ね。
スクロールから溢れ出したアロマカズラの蔦が、こちらに飛んできた物を次々と空中で、からめとっていく。
蔦についた無数の葉で挟むようにしてからめとってくれた物。
「ナイフにフォーク?」
ここまで案内してきた女性が投擲してきた物は食器だった。
「ちっ」
舌打ちをする女性。
次の瞬間だった。
その舌打ちが合図となって、厨房に置かれた無数の食器がふわりと浮かび上がった。




