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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第五章

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再びカヘロネーの私室

 王都アレイスラ教会で、無事にシスター・レーゼにお礼を伝え、経典を返した私は、アクター・カヘロネーの可愛らしい私室で向かい合って木の丸椅子に座っていた。

 カヘロネーはなぜか落ち着かない様子だ。ベールの隙間からちらりと覗く耳も少し赤いように見える。シスター・レーゼと別れ際に何やら話していた様子だったが、何か言われたのだろうか。


「カヘロネー、どうかされましたか?」

「い、いえ。何でもありません。ああ、そうです。何か飲み物でも用意しなければ、ですね。きゃっ!」


 そわそわとしていたカヘロネーが急に立ち上がったと思うと、丸椅子の脚に引っ掛けたのか倒れそうになる。

 私はとっさにカヘロネーの二の腕を両手でおさえ、支える。


「……失礼。大丈夫でしたか?」


 シスター服ごしに感じたカヘロネーは、とても華奢だった。

 思わず、強くおさえすぎてしまったかもと、謝罪すると、カヘロネーが姿勢をたて直すのを確認して手を離す。


 ──右手が全然、反応しなかったな。呪術の要素となる負の感情がとても少ないのか。それともこれもアクターとしての『加護』の力か?


 私が右手を握ったり開いたりを繰り返していると、なぜかその私の様子を見ていたカヘロネーが、耳だけでなく顔まで赤くなってくる。


「大丈夫、ですか? 顔が──」


 私が思わず二度目の問いかけをしたところで、顔を俯けてしまうカヘロネー。


「……です。お茶を」

「えっ?」


 何やら呟くようにして、さっと部屋から出ていくカヘロネー。

 私はポカンとそれを見送ることしか出来なかった。


 ◆◇


 だいぶ時間がたって戻ってきたカヘロネーは、顔色も戻って、態度もいつも通りだった。

 私はなんとなく先程の事には触れない方がいいかと、ゆっくりいれてもらったお茶のカップを傾ける。

 王都でよく飲まれている定番の茶葉のようだが、温度もちょうどいいし、ほとんど渋味が出ていない。

 それは茶葉の質でのもてなしではなく、手間と気遣いの感じられるお茶だった。


「ふぅ。美味しいお茶をありがとうございます。さて、そろそろお伺いしてもよろしいですか。死者の復活とやらについて」

「ええ。もちろんです」


 ことりとカップを机におくカヘロネー。部屋にうっすらと魔素が漂う。盗聴防止のカヘロネーの『加護』だろう。


「死から復活したのは、武具協会の副協会長ガーンです」


 そしてとうとうカヘロネーの口から今回の依頼についての話が始まった。



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