アーリの進言
アーリの大きなため息。
「本当に、もう。ルスト師はまず、ご自身の立場を自覚なさるべきです」
「立場って……?」
「ルスト師の魔族の討伐数で言えば、カリーン様を抜いております。それが何を意味するか、お分かりですか?」
「あー……」
「もうここアドミラル領では、カリーン様に続き、実質的に序列二位と言っても当然、過言ではありません。ルスト師が望めば、王家へと上申して、アドミラル領の一部を拝領するか、別の土地を得て、新たな貴族家をたてることも当然可能なほどでしょう」
「いやでも、そんな面倒なのは望まないし……」
「わかっておりますし、カリーン様も当然それは理解しております。しかしカリーン様に万が一の際はどうなるかはご自覚ください」
「はい……」
「その上で、今回の行動です」
「ええ……」
──まだ続くの? というか、もしかしてここからが本番?
私のその予想は、残念ながらあたってしまう。
その後、テラス席でとうとうとアーリから受けた「お話し」の内容は、要約すると今回のツヴァイへの対応について自身の安全をかえりみない事への注意だった。
そのなかで語られた、ロアの事は見捨てても、自身の安全を優先すべきだったという部分には思わず反論してしまう。
しかし私の立場を論拠に論理的に繰り出されるアーリからの指摘に、ぐうの音もでず。
──いやでも、また同じような事があっても絶対、見捨てるつもりはない……
無言でいる私に、再び大きなため息をつくアーリ。
「姉として家族として、ロアが無事に帰ってきた事は当然うれしいですし、個人的には大変感謝しております。タウラのことも、友人として、戻ってきてくれたことは本当に喜ばしいです」
そこで間を置くアーリ。
「しかし、前にも言いましたが私もロアも、戦いに身を置くものなのです。何かあった際には、守るべき者を生かすため、この槍を折り、命をなげうつ。その立場であり覚悟をしております。それに対して、カリーン様や、ルスト師は高い戦闘の実力はあれど、そのお立場が違うのです。それをご自覚ください」
「アーリとロアの覚悟は受け止めます。今回の事は、本当に申し訳ない。ただ、私に約束出来るのは、今回のように誰かが命をかける場面にならないように今後は最大限努力する、事だけだよ。やはり仲間を見捨てる事を約束は、私には出来ない。まあ、だからこそ私はカリーンのように、為政者の器ではないと思ってる」
「もうっ!」
そこで私は、今がチャンスとばかりに、こっそり頼んでおいた三皿目の甘味をそっとアーリに差し出す。今度のはぷるんとした食感の柑橘系のさっぱりとした味付けの物だ。
「ルスト師」
「良ければ一口だけでも試してみて? すごい食べやすいよ」
「もうっ……」
そうは言いつつ、アーリは添えられたスプーンに手を伸ばしてくれた。




