お茶の後のお菓子!!
リリー殿下とのお茶を終えた私が建物から出ると、そこにはアーリがいた。
「ルスト師、おかえりなさい。ご無事で何よりでした」
「あ、アーリ。ただいま」
私はちらっと見かけただけで、ゆっくりと話もしていなかったアーリに、改めて帰還の挨拶を告げる。
「ロアから、聞きました。ルスト師」
優しげな、満面の笑みを浮かべ、一歩こちらへと詰めながらそう口にするアーリ。
「あー。えーと、……どのこと?」
「あら。ルスト師は、心あたりが複数あるんですね?」
こてんと首を傾けて相変わらず満面の笑みのアーリ。
どうやら、余計な事を言ったらしい。私は自分の戦術のミスを自覚する。さらに一歩詰めてくるアーリ。
──ロア、アーリに何を告げ口したんだ。そして、近いっ
領都プタレスクも順調に発展していて、往来もかなり増えている。道行く人は顔見知りも多い。こちらを見る、そんな彼らの好奇に満ちた視線。
私は現状の打開を求めて、必死に周囲を見回す。
──くっ! 誰も助けてくれそうな人はいない。あ、あれなら……
「アーリ、こんなところで立ち話も何だし、あの店にでも入らない?」
そう言って私が指差したのは最近出来た、甘いものを提供する食べ物のお店の一つ。ちょうどそこの店主とは、少し交流があった。
店の建物がイブによる竹製で、レイアウトの面で店主からの希望に色々と対応してあげたのだ。
「混んでいますよ? それにルスト師、このあと予定があるのでは?」
──さすがアーリ。私の予定まで把握されているとは。その上での、このタイミングでの出待ちからの『お話し』か。まあでも、お店へ行くのを断られてはいないから、ここでちゃんと甘いもので懐柔、その隙に弁明をするのがベストのはず!
「大丈夫大丈夫。こっちに来て」
「あっ」
そう言ってアーリの手を引きながら、歩き出す。一瞬、何か言いたげな雰囲気を出すが結局、素直についてきてくれるアーリ。
店の前の長蛇の列を避け、裏手へと回る。イブを通して建物の構造は熟知している。
裏口に近づく。
近づくにつれて、甘い香りが鼻をくすぐる。裏口をノックして、声をかける。
「こんにちはー。店主さんはいますか?」
「まあまあ! これはルスト師! ようやく食べに来てくださったんですか! お待ちしておりましたよ」
ちょうどこの店の店主が、ドアを開けながら歓迎してくれる。若いながらにこの辺境の街で甘味の人気店を立派に切り盛りしている、女傑だ。
私は、そういえば是非食べに来てと言われていたなと、思い出す。
「さあさあ、こちらへ。特別席が空いていますよ。お連れ様もご一緒にどうぞどうぞ」
特別席は、私が頼まれて特別に誂えたエリアの一つだった。
最上階のテラス席。高くて見通しの良いところが好きな、この都市の権力者の誰かさんが好きそうな作りになっている。
「すごい……」
眺望に対する、アーリの感嘆の声。
「ねえ、なかなか眺めが良いね。店主さん、お店もかなり人気みたいですね」
「それはもう。すべてルスト師のお陰です。使いやすい厨房にセンスの良く可愛い店内の設え。それにこの特別席はデートにも人気なんですよ」
「へぇ。そんな需要も。まあでも人気なのは、ここの甘味の味が良いからでしょう。私の周りでも最近話題ですよ」
「まあ、うれしい事を言ってくださるのですね、ルスト師。そうだ、よろしければ新作のおすすめがあるのですが、いかがですか? 自信作です」
ニヤリと笑って自信満々にそう告げる店主。
「是非お願いします。アーリはどうする?」
「私もそれでお願いします」
その後も二言三言、言葉を交わし、店主が下がる。
「ルスト師、今の方と親しげでしたね?」
「そうかな。少し仕事で一緒に働いたぐらいだよ」
「それになかなかの美人でしたね」
「そう、かもね?」
──あれ、もしかして場所間違えたかな?
そんなやり取りをしていると、ちょうど店主自ら、お皿を持って私たちの座るテラス席へと再び現れた。




