地上へ!
ローズの蔦が閉じきる前にちらりと見えた、空間の穴は相変わらず健在のようだった。
しかしすぐにローズの蔦は完全な球となり私の周囲を一分の隙なく覆いつくす。
真っ暗になる視界。
しかし振動と音でわかる。
ローズの蔦ごと、洞窟の壁へとめり込んでいくばかりか、そのまま壁の中を押され、移動し続けているようだ。
「ローズっ、すまない。耐えてくれ」
出来るだけローズの負担にならないように、私は折り曲げられるだけ体を曲げて、少しでも小さくなる。
──蔦の球の表面積が少ないほど、ローズへの負荷が少ないはず……
摩擦で蔦が引きちぎられる、ブチブチという音。私の隣に浮かぶスクロールから追加で溢れてくる新しいローズの蔦の擦れる音。
ガリガリと岩が削れる音。
それ以外にも聞いたことのないような音が、いくつも暗闇に響く。
「おいおい、ツヴァイには制約があったんじゃないのか……」
思わずそんな愚痴が口をつく。
そっと手の下のローズの蔦が、指へと絡み付く。
「ローズ……」
私は、今すべきことに集中する。そして、ふとした思いつきが一つ。
それをローズへと手早く伝える。
手探りで取り出した追加のスクロール。
「《多重展開》《顕現》ローズ」
もう一つのスクロールから溢れるローズの蔦。
その蔦が再び私の周囲を覆う。
二重の蔦の球の中に入った状態となる私。
「今だ! ローズっ」
私の声に合わせ、外側の蔦の棘を生やすと、外側の球を回転させ始めるローズ。
固く固く生やした棘が、回転しながら岩を削っていく。
その球が高速で回転する音と、岩が削られていく音。
その音の代わりに、蔦が引きちぎれる音が聞こえなくなる。
その時だった。私の指へと絡んだ蔦がぎゅっと手を握ってくる。
それは合図だった。
ローズの蔦で出来た球がほどけ、一気に視野が開ける。
目をさす日の光。
どうやら無事に洞窟から地上へと抜けたようだった。
斥力場の圧力も、消える。
私はローズの蔦に手を支えられながら、少し飛び出した上空から地上へとゆっくりと降り立った。




