お出かけついでに小遣い稼ぎをしよう!!
私はヒポポと共に、数日、遠出をした帰り道にいた。
カリーンは言葉通り、しっかりと今回の水問題の解決用に予算を計上してくれたのだ。これで大型の水瓶さえあれば浄水機能を付けるのはさほど難しくはない。
そのため、ロアとアーリには、今回出た予算のほとんどを持って、王都へと水瓶の買い出しに行って貰っている。辺境で瓶を自作するのは限界があるので。
私達はその代わり、とあるモンスターの素材を調達に行っていたのだが、無事に手にすることが出来てほっとしていた。
予め、カリーンに近隣のモンスターの事を聞いて目星をつけていたのだが、相手も生き物だ。出会えない可能性だって、当然高い。
そういう意味では非常に運が良かった。
ちなみに出歩いていた数日の間に目標のモンスター以外にもそれなりの数を狩ることが出来ている。色々な錬成用の素材を手に入れられてホクホクだ。
数種類のモンスター狩り用のスクロールを用意していて大正解だった。狩るモンスターと相性の悪いスクロールだと、せっかくの錬成素材にキズがついたり劣化したりしてしまうので。
「ぶもーっ」と考え事をしていた私にヒポポが注意してくれる。どうやらカリーンの野営地が見えてきたらしい。
ヒポポにまたがったまま、野営地へと入っていく。
すれ違う人から、口々に帰還を喜ぶような挨拶を受ける。狩りの成果を聞かれることも多い。どうやら皆、水の配給が増えるかもしれない事に相当期待しているのが、伝わってくる。
食料保管庫の近くを通ると、ちょうど食料管理の責任者の姿が見える。確か、あのあとアーリから名前を聞いていた。
「あ、ルスト師! お帰りなさい!」
「戻りました。リットナーさん。ちょうど良かった。実は道中でモンスターを狩ったのですが、錬金術用の素材以外の部分、可食部があればと思って持って帰ってきたんですよ。食料のたしになればと思って」
「本当かっ! それはありがたい。是非買い取らせてくれ! で、その肉はどこに?」
「このリュックの中です。容量、少し錬金術で拡張しているんですよ」と背負ったリュックを指差しながら私は伝える。
その頃には野営地の住人が数人、集まって来ていた。皆、なかなか腕っぷしの強そうな強面。多分、どんなモンスターを狩ったのか興味津々なのだろう。
「あー。錬金術用の素材を剥いだ以外は処理してないのですが、どこに出せばいいですか?」と私は尋ねる。
「おう、こっちに解体用の場所がある! 査定するからそこに頼む! で、何を狩ってきたんだ?」
近くの天幕に案内される。どうやらここで良いらしい。
私はリュックサックを下ろすと、一本だけスクロールを先に取り出し、展開しておく。ぞろぞろと、ついてきていた住民達の不思議そうな顔。
「じゃあ、出していきますね」と告げると、モンスターの死体を次々に置いていく。
まずは牛型のモンスター。角が二列、頭から背中にかけて何本も生えている。錬金術の素材用に角と複数ある胃を剥ぎ取ってある。それを四頭ほど。一気に場所が狭くなる。
「な、なに! ツインラインホーンのオスを四体だとっ」「一人で狩ったのか!? 群れで行動する危険な──」「ステーキか! いや、ここは焼き肉か?」ざわざわとこちらを見ていた住民達がざわつく。
「ほとんどキズがない! 最高の状態だ。素晴らしい、おい、お前達! 手伝ってくれ」とリットナーが天幕で働く部下を呼ぶ。
「リットナーさん、まだあるんですが……」
「なにっ!?」
「とりあえず出していきますね」と、私は続けて他にも狩ったモンスターの死体を次々に出していく。
大きさが大小様々なネズミ型。頭が三つある馬型。一見もぐらのような見た目の熊型。それに陸上を歩く用に足の生えた魚型のモンスター。それぞれ数匹から、魚は数十匹。
小山のように積まれたモンスター達。
「おいおいおい、容量の増量、全然少しじゃないだろ」とリットナーの呟き。
さっきまで騒いでいた周りの住民達も、嘘のように静まり返っている。一人を除いて。
「──サウザンドラットに、ヘルホース。土竜熊からあれは……見たこともないモンスターだ。少なくとも特級危険生物に認定されているヘルホースと土竜熊を何匹も倒している。是非、戦ってみたい」と集まった強面の住民達の中でも抜きん出て体格の良い、スキンヘッドの男が呟く。
スキンヘッド男の熱い視線を感じる。
「……後はおまかせしますね。査定の結果が出たら教えて下さい」と言い残し、私はそそくさとその場をあとにした。




