シュトルナ??
「自らの足で来てくれて嬉しいよ、ルスト=シュトルナ=ハーツニクスくん」
巨大ホムンクルスは尊大な口調でのんびりと告げる。
「うれしいついでに、彼女達を解放してくれたり、します? お名前を存じ上げない方」
私は冷や汗をかいているのを気づかれないよう、精一杯の虚勢をはってみる。聞きなれない名前を言われたが、それはとりあえずスルーする。
「いいともいいとも。ほら」
そういって両手を打ち鳴らす、巨大ホムンクルス。
ぱんっという高い音が鳴り響く。
私は目の前の存在への警戒を途切らせないようにしながら、ちらりと後ろを見る。
がばっと立ち上がったロアがこちらへと駆けてくる。
「ロアっ!」
「きゃっ」
私が制止を叫ぼうとしたちょうどその時、空間の穴へと突っ込もうとしたロアが何かに弾かれるようにして、しりもちをつく。
すぐに再び立ち上がるロア。手にした半分になった槍に魔素をまとわせ、空間の穴へと突き立てようとする。
がつんがつんと、鈍い音。槍が、通らないようだ。
目に止まらぬ、刺突の連撃。しかしその全てがことごとく跳ね返されてしまっている。
「ふーむ。ルスト=シュトルナ=ハーツニクスくん。ちょっと躾が出来てないんじゃないかね、あれは」
あきれたような声の巨大ホムンクルス。相変わらず尊大な仕草で肩をすくめている。
私は、ばっと振り返ると、空間の穴へと駆け寄る。確かに空間の穴を覆うように、何か見えない障壁のようなものがある。
──手触りは、錬金術協会で使用していた特別保管庫の斥力場と似ているな。
私が来たことで、槍を納めるロア。
私は斥力場に両手をつき、顔を寄せると急いでロアへと話しかける。
「ロア、たのむ。タウラを連れて外へ。そしてセイルークと一緒に、出来るだけ遠くへ」
「でもっ!」
「たのむよ」
私の右の手のひらへ、斥力場越しに自分の左手をあてるように重ねるロア。背伸びして、ぐっと顔を近づけてくる。睨み付けていると言ってもいいような真剣な表情。
「帰りを、待ってる」
それだけ告げると、勢いよく身をひるがえすロア。
タウラを包んだままのローズを回収し、一気に走り去っていく。
「ふー」
私はため息を一つ。
斥力場についたままの右手を名残惜しげに握りこむ。
そして背後の存在へと対峙するため、ゆっくりと振り返った。




