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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第四章

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回収!!

 空間に空いた穴を、私はロアと通り抜ける。


 最初に目に飛び込んできたのは、一面の、白。

 そこはがらんとした、どこもかしこも真っ白な部屋だった。

 正面には大人数人が座れそうな大きな白い椅子。


 その椅子に、タウラがいた。


「──うん、場所はぴったり」


 私は思わずそう呟くと、ちらりとロアの方を見る。穴を通過する際に別れ別れに離れてしまう可能性を心配していたが、どうやら杞憂だったようだ。

 どちらからともなく手を離し、私はスクロールを取り出し展開させ、ロアは槍を構える。


 お互い、最大限の警戒の姿勢。


 部屋は、かなり大きいが、本当に椅子しか無い。ドアすらも見当たらないのだ。


 じりじりと、私はタウラの座る椅子へと近づいていく。タウラは目を閉じ、角ばった、これまた大きな背もたれに身を委ねている。その頭部を覆うように、何か金属製らしき物が被さっている。

 真っ白な紐のような物が、天井から束になってその被り物へ繋がっている。


「ルスト師」


 ロアの緊迫した小声。

 私はピタリと足を止め、無言で視線だけロアへ。


「見えない。透視も。遠視も。全部」


 ロアの瞳に宿る魔素。そして眼鏡型の魔道具は私の目で見ても、いつも通り作動している様子。

 全部と言うのは、この部屋にあるものが全て見通せないという事だろう。かなり手痛いが、しかたない。


 私はそっと小声で呼び掛ける。


「タウラっ。タウラっ」


 一切反応は無い。

 展開させたスクロールのうち、《転写》のスクロールへと目を通す。

 タウラの状態は、完全に平常だった。


 ──おかしい


 私はタウラの頭に被さっている金属製らしきものや、紐のようなもの、椅子へとスクロールを移動させる。


 ──全く、反応しないぞっ!? まるで、存在していないかのような……


 私はその結果に思わず目を見開く。これまで読み取れない物はいくつもあったが、その存在すらも認知できない物は、初めてだった。


 私はその結果に覚悟を決めと、タウラの頭部へと手を伸ばしながらロアへと話しかける。


「ロア。こっちも全く何も読み取れない。何が起こるかわからない」

「了解」


 背後で警戒してくれているロアからは、それだけ。しかしその短い台詞に今は逆に頼もしさを感じる。


 私の指先が、タウラの被り物に触れる。

 ひんやりとしたそれを、そっとタウラの頭から持ち上げる。


 その時だった、被り物から伸びていた白い無数の紐が、動く。まるで巻き取られるかのようにして、被り物へと勢いよく引っ込んでいく。


 一瞬、私も流石に、ぎょっとして動きを止めてしまう。しかしすぐに気を取り直すと、被り物をひっくり返しつつ、その全体を観察してみる。


 ──不思議だ。金属にしてはかなり軽いし、一切継ぎ目が無い。あれだけあった紐がどこへ仕舞われたのかもわからないな。


 思わずまじまじと観察していると、声がかかる。


「ルスト師」


 ロアの無機質な声。


「はい、すいませんっ」


 反射的に即、謝ると被り物をリュックに突っ込む。

 それをじっと見るロアの雄弁な、瞳。

 これを持ってくのは、決して知的好奇心だけではないと言い訳しそうになるのをぐっとこらえる。


 展開している別のスクロールを発動させる。


「《顕現》ローズ」


 ──出来るか、不安だったけど問題ないな。


 スクロールから溢れだしたローズの蔓が相変わらず意識の戻らないタウラの体を優しく包み込むように、椅子から持ち上げる。


「──何も、起きないな。ロア、撤収しよう」


 タウラを椅子から離しても一切反応が無い。あまりの呆気なさに、逆に警戒心が沸くぐらいだ。


「……うん」


 ロアの返事も間がある。やはり私と同じように簡単すぎる事に違和感を感じているのだろう。

 私たちは目配せだけ交わすと、ここへきた空間に空いたままの穴へと一直線に走り出す。


 ──あと、少し。もうあと、三歩──一歩


 そのままタウラを包んだローズをつれ、私たちは空間の穴へ。


 駆け抜ける。


 次の瞬間、私たちはもと居た、不義の三席の洞窟へと戻ってきていた。


「何事も無い?」


 ロアがこちらを向いて確認してくる。


「──いや、まずいかもしれない。穴が閉じない」


 私はその問いに、残念ながら悪い知らせを返すしか、なかった。









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