遠眼鏡と祭壇!!
「ロア、目への負荷はどう? 体に違和感は感じる?」
「問題ない」
私は《転写》スクロールでロアの状態を確認しつつ、本人へも質問する。
錬金術師として見えるロアの体を巡る魔素の流れもスムーズだ。魔眼の過剰発動も生じていない。
ロアには片目を眼帯型の《封印》のスクロールで覆ってもらい、反対側の、『遠視』の魔眼で先日完成したばかりの魔導具を試用して貰っていた。
新作魔導具の形は、腕ぐらいの長さの筒。
その両端には、とあるモンスターから採取した水晶体を利用していた。
この水晶体集めには普段とは違う苦労があった。今、思い出しても顔に血が上る感じがする。
私は小さく頭を振ると、いま行っている作業に集中する。
今私たちがいる場所は、例の不義の三席のいたダンジョンの広間。タウラが拐われていった場所だ。
ちょうどタウラが最後にいた場所には祭壇を設置し、シスター・レーゼから借り受けた経典を設置してある。
その経典から呪術的なパスを繋げるため、祭壇に巻き付くように配置したのは、呪術師の使い魔だった触手ナマズの素材。
触手部分を丹念に加工し、その体繊維から紡いだ特製の呪力導線だ。
もちろん、呪力導線には呪いの拡散を防ぐよう、私の手袋の劣化版ではあるが、被膜をしてある。
その呪力導線の片側はレーゼの経典に。そしてもう片側は私の手にある。
呪術的パスは接触している時に最大の共鳴を起こすのだが、ロアの安全上、出来るだけ祭壇から離れていてもらうための措置だ。
そして、これからいよいよ、ロアの持つ魔導具への接続だ。
「ロア」
「いつでも良い。さっさと繋いで」
事前に説明していた事もあり、せっかちなところのあるロアからの催促。
私は苦笑いを返すと、念のため今一度、魔導具へ施した安全機構の確認を行う。
過剰な呪力供給で、魔導具と呪力導線の接合部が焼ききれる仕組みだ。
──呪力と魔素を変換する部分に使用した私のブラッディポーションも満タンだ。よし
「わかった。接続する」
「うん」
私は、慎重に呪力導線を魔導具へと繋げる。
この段階では何も起きないのが正常。しかし、魔素と違い謎の多い呪力は気が抜けない。
繋げて数秒、私は魔導具への呪力の流れがまだ無いことを確認。
ついで、辺りを回遊するようにさせている《転写》のスクロールへ次々に目を通していく。
「全て、異常なし。次はいよいよ経典の呪力を励起させる」
「うん。腕、疲れた」
いつもと変わらぬロアの様子。
気遣いなのか天然なのか、いまだにいまいち掴めないままのロアに内心感謝しながら、私はロアから離れ、祭壇へと近づいていった。




