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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第一章

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side リハルザム 4

 壊れた扉を乗り越え、スカベンジャースライムが部屋の中へなだれ込んでくる。


「な、早く扉を閉めろっ!」と叫ぶリハルザム。


「む、無理ですよ!」と見習いの一人が叫ぶ。


 倒れた扉はスカベンジャースライムに覆われ、すでにボロボロになっていた。スカベンジャースライムは、無機物や生き物の死骸、排泄物を好んで食べる性質を持つ。

 通常であれば、そこまで命の危険がある相手ではない。

 実際、部屋になだれ込んできたスカベンジャースライム達は、床に放置された素材や備品に群がっている。


「く、何でもいい、さっさと攻撃するぞ!」と叫ぶサバサ。手にはちょうど持っていた魔導回路をチェックする用の器具。

 装置を起動させ、炎の刃を発生させると、スカベンジャースライムに切りかかって行く。

 サバサが炎の刃を振る。

 横一閃。

 群がっていた備品ごと、スカベンジャースライムがじゅっと音を立てて蒸発する。蒸気からは、ぷーんと腐乱臭が広がる。


「おい、そこの木箱は納品用の魔導回路が入っているんだ、やめろっ」と、リハルザムはサバサに触発されてスカベンジャースライムに攻撃を始めた見習い達を制止する。


 木箱に向けて駆け寄るリハルザム。

 その足元には、たまたま滑り込むようにして移動してきたスカベンジャースライムが一匹。

 リハルザムがスカベンジャースライムの弾力と粘性を兼ね備えたプルプルボディを、踏む。


 つるんと音が聞こえそうな勢いで、スカベンジャースライムを踏んだリハルザムの肥えた体が、前向きに投げ出されるように倒れる。


 倒れ込んだ先には、群れていたスカベンジャースライムの集団がいた。リハルザムの巨体を優しく受け止めるスカベンジャースライムのプルプルボディ。しかしすぐにリハルザムの体はスカベンジャースライムの集団の中へと沈み込んでいく。

 目から口から鼻から。腐乱臭に満ちたスカベンジャースライムがリハルザムへと侵入していく。じたばたと、もがき苦しむリハルザム。


 別のスカベンジャースライムを攻撃していた見習い達が駆け寄ると、リハルザムの飛び出した足を持って、力一杯引っ張る。


 すぽんとスカベンジャースライムの中から抜けたリハルザム。

 着替えたばかりの服はスカベンジャースライムに溶かされ、ところどころ穴が空き、再びその身は腐乱臭を放っていた。


 激しくむせているリハルザムをそっとしておこうと、見習い達は無言で視線を交わすと、出来るだけリハルザムから離れる様にしてスカベンジャースライムへの攻撃を続ける。

 その頃になって、ようやく警備担当者が駆けつけてくる。

 彼らと協力してスカベンジャースライムを討伐していく見習い達。


 すべてのスカベンジャースライムを討伐し、大まかにでも片付けが終わった頃には、空が白んでいた。


 一見無事に見えた魔導回路が詰められた木箱には、実は一匹だけ、スカベンジャースライムが侵入していた。

 そのスカベンジャースライムは駆けつけた警備担当者によって無事に討伐されるも、魔導回路の数枚に取りつき、構成する部品の一部を溶かし食べていた。


 そんな事になっていたとは、武具錬成課の面々は誰も気づいておらず。リハルザムにいたっては、粘液でどろどろの体を引きずってすでに帰ってしまっていた。


 顔を見合わせる見習い達。

 疲労で目の下に隈を作った彼らの顔を朝の爽やかな風が撫で、日の光が照らす。スカベンジャースライムによって壁も数ヶ所穴開きになっていた。


「スキーニ。大事な仕事だ。武具協会に魔導回路を朝一で納品してこい」


 と疲労困憊の先輩達に仕事を押し付けられたのは、武具錬成課で一番の新人のスキーニだった。

 スキーニは言われるがまま、朝一でそのまま武具協会へと魔導回路を納品してしまう。魔導回路の状態の再確認は、一切されることなく。


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― 新着の感想 ―
[一言] 納品前の検品は必須。
[一言] 電気の場合、穴あきの回路は起動すらしない。 魔力で繋ぐとしたら、基準値ギリギリの設計だから 暴走か沈黙かの二択の予感。 ついでに商品はスカベンジャースライムの腐乱臭。 リハルザム自慢の商…
[気になる点] 硫黄のようなにおいは腐「乱」臭ではなく,腐「卵」臭が正しい.化学薬品をゴリゴリ吸収したみたいな設定のスライムを焼いたら生ものが腐ったようなにおいがする設定なら別に構わないが参考まで.
感想一覧
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