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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第四章

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訪れた場所は!!

 気がつくと、私は懐かしくもあまり嬉しくない場所にたっていた。

 かつて自分から退職した錬金術協会。その基礎研究課の部屋だ。


 その自分の机の前で、ゆっくりと両手を動かし机に触れてみる。


 ──触った感じもあるし、何より体は思い通りに動く。いや、僅かに右手に違和感があるか。呪術同士が干渉している?


 協会の建物はアーマーサーモンによって破壊され、いまだに再建されていないと聞く。だとすればここは現実、と言う事はあり得ないだろう。


「これは、私の記憶をもとにした明晰夢のようなものかな。──だとしても何でここなんだか」


 私は腰に手を当て、ため息混じりに周りを見回し呟く。


「いや、私の記憶だけでは無さそうだ」


 よくみると、部屋の細部に違和感がある。

 棚に並んだ実験用器具の間には、アレイスラ教の祭具らしき物が並んでいる。

 あちらには、見たことの無い素朴な女の子の人形。手作りのものだろうか。


「ふーむ。もしかしてこれはアクター・レーゼの記憶と混じっている? だとすると複数の精神の領域が何らかの呪術で……」


 その時だった。

 不意に感じる強い気配。

 その殺気にとっさに強く想起したのは、ツインホーンテールの愛用のナイフだった。


 すると不思議なことに、気がつくと私の左手にはツインホーンテールのナイフがあった。逆手に握ったそれを、振るう。


 響きわたる硬質な音。


「これは、なんだろう? やっぱり夢的な世界なのか」


 手にしたナイフと、それで防いだ存在を見て、よりいっそう不思議さが増す。


 現れ襲ってきたのは、子供ぐらいの背丈の熊の人形だった。床からまるで生えるようにして突然目の前に現れたそれが可愛らしい見た目に反して、鋭く尖った爪で切りかかってきていた。鳴き声が、がうがうと少し煩い。


 熊の人形の体重が軽いせいか、記憶の中の世界だからだろうか。斬撃にたいした重さは無い。

 私でも十分に片手で受け止められる程度。


「ここで怪我をするとどうなるのか、少しだけ興味はあるけど。あえてアーリに怒られそうな事を増やす必要もないか。……ポーションも使えるかわからないし」


 熊の人形の爪をナイフで弾きあげる。万歳をした格好になる熊の人形。そのまま空いた人形の首に、さっとナイフの刃を滑らせる。


「がう?」と不思議そうな顔をして、しかしすぐにポンッと音を立てて熊が煙となってしまう。


「──敵の消え方が、ダンジョンの中に似ているなー。より軽い感じだけど」


 私はそのまま次の敵が現れるかなと警戒する。しかし、熊が変化した煙もすぐに消え、基礎研究課の研究室は静まり返ったままだ。


 私は構えを解くと、ゆっくりとドアへと向かう。


「普通に開くな」


 そっとナイフの刃先を開いたドアの隙間から差し出し、周囲の様子を刀身にうつして確認する。


 ──思ったよりもこの空間、広い可能性が出てきたな。ちょっと手間取りそうかも……。


 刀身にうつる景色は私のよく見知った協会の建物の廊下よりも、だいぶ長く続いているようだ。

 その廊下の奥、遠すぎてはっきりとは見えないが、何かがこちらへと近づいてきていた。



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