瓶の中身?
私は手にした、ひんやりとしたポーションの瓶の蓋を開ける。
色々と思うことはあれど、タウラの行方や謎の多い魔族について、何かしらの手がかりになりうる存在だ。諸々のリスクは高いが、それでも、彼女を助けるべきだろうと決断する。
ポーションの瓶を、傾ける。
私の手の動きに合わせ、瓶の口から金色に眩しく輝く液体が、とくとくと、したたり落ちる。
濃縮魔素溶液を使用した、最高濃度の魔素の逸品だ。セイルークなら興奮のあまり尻尾の先がビタビタと地面を打ち付けることだろう。
それをまんべんなく、足元の黒こげのリリーの体へと振りかける。
ポーションが触れた場所から全身に広がるようにして、炭化した皮膚が剥がれ落ちる。その下から現れた肌が、瞬く間に綺麗な肌色へと再生されていく。
その時だった。
急に激しく、むせはじめるリリーの体。激しく痙攣するその体を、私は急いで横向きに寝た状態へと動かす。
手に触れる感触に思わず、顔がひきつりそうになる。しかしこんなことで顔色を変える自分の反応が悔しくて、表情を意思の力で抑えこむ。
その間に、ごぽっ、ごぽっという、重く湿った咳の音がし始める。
血の混じった木の根の塊のようなドロドロの物体が、次々とリリーの口から吐き出されてきた。
推測するに、体内でリリーと不義の三席とが融合していた部分だろう。不義の三席が死んだことで活動を停止し、異物としてポーションの作用で排出されているようだ。
その排出が、いっこうに止まらない。
逆に体の震えが一層激しくなっていく。まるで内蔵がすべて出てきたかのような量が、地面に積み重なっても、まだ止まらない。
私はリリーの足をつかんで、崩れてきそうなそれから少し遠ざけると、最高級のポーションの二本目を振りかける。
──飲ませるのが一番なんだろうけど、これじゃあすぐに吐き出してしまう、か。
状態を観察している間に、ピークを過ぎたのか徐々に落ち着きを見せるリリー。しかしその意識は戻らないようだ。
《転写》のスクロールに表示される情報でも相変わらず文字化けは直らない。
「このまま、運ぶしかないか。ヒポポをよぶか」
私はヒポポを顕現するため、スクロールを展開する。
当然そのままではダンジョンのルールで錬成獣は呼び出せない。その縛りを越えるため、先ほど仕舞ったばかりの浄光を閉じ込めたガラス瓶も一緒にリュックから取り出す。
「……この瓶、だよな?」
驚き思わず漏れる、呟き。
この短い時間の間に、取り出した瓶の中で浄光の姿が大きく変わっていたのだ。
それは青く輝く光はそのままに、まるで、小人のような姿をとっていた。




