声
ノイズ混じりだが、それは間違いなく、タウラの声だった。
「タウラ! 無事か?! どこにいる?」
私はガバッと顔を上げると、すがりつくようにして、タウラの剣へと問いかける。
「本当に、ルスト、なのか。急に──ナイフから、声がしたから──。──私は──無事──」
剣先に刺さった浄光の光の瞬きに合わせ、タウラの声が途切れながらも聞こえてくる。
「ここは、とても寒くて、息苦──それに、真っ暗──」
しかしすぐに、途切れる頻度は上がり、その声も段々と小さくなっていく。
「──眩しい光が────」
そこで、ぷつんと音が途切れる。
ざーというノイズだけが流れた後に、そのノイズすらも完全に消えてしまう。
少し離れたところからする、ひゅーひゅーという耳障りな呼吸音だけが、訪れたその静寂を破る。
「タウラ! タウラ! 聞こえるか?!」
私は問いかけた後、必死に耳をすませるが、それ以上の応答は、なかった。
私はタウラの剣を強く強く、握りしめる。
その剣先に刺さった浄光の塊は、最初より一回り二回り、小さくなっていた。
地面に突き刺したタウラの剣をゆっくりと抜くと、私は丁寧に丁寧に、リュックの中へと仕舞う。ヒナゲシとタウラによって名付けられたその剣──その由来となったヒナゲシの、繊細で華奢な花を扱うように。
足元には小さくなったままの浄光の塊がまだ残っている。どうやら呪術に縛られ、消えることが出来ないようだ。
私は右手に呪いをまとわせ、むんずとそれを掴むと、ポーション用の予備の瓶に押し込むようにして詰め込む。蓋をすると、封印のスクロールを巻き付け、さらに地面に溜まった自らの血に人差し指を浸し、呪いを封印に上乗せしておく。
──これは、何かに使えるかもしれない。あとは、あれか。
私の視線の先には、うずくまったまま、ひゅーひゅーと呼吸を続けている真っ黒なもの。『不義の三席』に取り込まれ融合していたリリーの体だ。
血を流し過ぎてふらふらする体でそちらへと近づく。
歩きながら、立て続けに何本も何本もスタミナポーションをあおり飲み下す。
「はあ、はあっ。流石にポーションを飲み過ぎ、だよな」
空の瓶を雑にリュックに突っ込み、その手で《転写》のスクロールを取り出す。
「《展開》──文字化けがひどい。本当に表層の部分しか、読み取れない──」
私は、役に立つ情報の得られなかった転写のスクロールから視線を外すと、じっと足元に転がるそれを眺める。
──考えろ! 考えろ! 最優先事項は、タウラを取り戻すことだ。そのために最適な行動をする。感情に、流されるな。
私はリュックに手を差し入れる。指先に触れたひんやりとした硬質な触感のそれを取り出すと、足元に転がるそれの上にかざした。




