厄災を切り裂く一振りの剣
不義の三席の根が、全身をおおい、きつく締め上げられる。
身動きが、取れない。
私の出血している右手に触れないためだろうか。憎たらしいことに、右腕だけは右肘まで根が覆ったところで止まっている。
だから、右手首だけは動く。
しかし、それだけだ。
──あーあ。これじゃあ呪いの付与もままならないな……。
全身をおおった根によって、私の体が持ち上げられる。そのまま不義の三席の正面近くまで、ゆっくりと引き寄せられていく。どこか丁寧さが感じられるその根の動きが、逆に気持ち悪い。
──地下茎に刻まれた顔でも、それがニタニタと笑っているのぐらいは判別できるんだな。
正面を眺めながらそんな小さな発見をしている間にも、どんどんと近づいてくる不義の三席の本体。
近くで見るといっそう醜悪だ。
中途半端に人間のような見た目が、嫌悪感をあおる。
万に一つの可能性にかけて、今更ながらに交渉出来ないかせめて何か話しかけるかと口を開きかける。
だが残念ながら、ちょうどするすると顔下半分にまで巻き付いた根で、話すことすらも封じられてしまった。
「そうだ、良いことを思い付きました。このまま一緒になってしまいましょう、ルスト様? そうですわ。それが手っ取り早くて素敵です。私の中のリリーも喜びますわ。そうしましょう。そうしましょう」
手らしき物を、顔らしき物の前で合わせるようにして、首を傾げながらそんな事を言い始める不義の三席。
両手の指先だけを合わせる、リリーが良くしていたその仕草はどうも不義の三席の癖だったようだ。
不義の三席が合わせた両手を広げると、その動きの勢いのままに、地下茎に縦に亀裂が入り、ぱかりと割れるようにして開く。
ねっとりと湿った地下茎の内部があらわになる。
漂う異臭。
根が私の体を前へ前へと。
ゆっくりと異臭が強くなっていく。
その時だった。
私の視界の中へと走り込んでくる人影。
──タウラっ?!
私の飛ばされたナイフを腰だめに構え、口からは血を滴らせながら。
タウラが不義の三席へ向かって、駆けて行った。
本日、コミカライズ版の更新されております!
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