煽り!!
「つぅ……」
私は自分で突き刺した右手の怪我を庇いながら、左手のナイフ一本で不義の三席の攻撃をさばいていた。
残念ながら、ほとんど近づくことすらままならない。一定の距離をこえて詰め寄ろうとするタイミングで、攻撃の密度を急に上げられてしまうのだ。
とはいえ、そこで下がると、今度は舞いちる花びらの陰から、嫌なタイミングで根っこの攻撃が断続的に迫ってくる。
「……本当に、嫌なタイミングだ」
一つ一つの攻撃は何とか対応出来ている。そして浄光で切り裂けばあっという間に根自体もポロポロと崩れていく。
しかし逆に言えば、それしかさせてもらえていない状態だ。
右手へのポーションの使用による回復も、スクロールを使用しようと取り出すことも。
ちょうど嫌なタイミングで全て邪魔されて、ままならない。
──完全に遊ばれている? いや、体力の消耗を待っているのか。
そんな事を考えていると、舞い散る花びらの量がいつの間にか増加していた。それに合わせ、不義の三席の攻撃頻度がそこから更に上がっていく。
不義の三席からは距離をとったままなのに、だ。
ちらりと上を見る。
天井は、満開の白い花畑と化していた。
──最悪だ。
ついに、息が切れ始める。
ここまでくると、呪術師から受け継いだ戦闘経験がなければ、捌くことすら出来ずにあっという間にやられてしまっていたのは、間違いない。
もう、半ば本能で根の攻撃をさばいている状態だ。
「お辛そうですよ、ルスト様。そんなに頑張らなくても、わたくしを受け入れて下されば全てうまくいくんですよ?」
そんな私のぎりぎりの様子を見て、ざらついた声をかけてくる不義の三席。
「残念だが、それは、ないっ!」
捌くので精一杯だが、返事だけはしておく。断る一択。
「全く、何が気に入らないのでしょうね? 長年の研究も進み、しかもこんな美女つきですよ。今はまあ、だいぶぼろぼろですけど。そんなのルスト様のポーションならすぐに治せるでしょう? しかも一国の王女。ちょいちょいと邪魔者を数人処分すれば王配だって狙えますよ。そうしたら権力だって思いのままです。ルスト様は、神への信心が深い訳でもないのに」
ざらついた声でとうとうと話し続ける不義の三席。
「ああ。もしかして他に狙っている女性でもいるのですか? あらあら。誰かしら。わたくしは心が広いですからね。二人や三人の側室ぐらいでしたら、それこそ認めなくも無いですよ?」
なぜか急に楽しげな不義の三席。
「で、どなたですの? カリーン殿? 女上司とのただならぬ恋ですかっ。見た目の愛らしさと巨人族由来の怪力のギャップ萌えですか? あ、それともアーリ殿ですかね。良くお二人で色々と話し込まれていたとか。苦労している美人にキュンと来ちゃいました? 大穴でロア殿もありそうですね。ツンデレ好きにはたまらないですよね。それともそこの……」
「もう、だま、れっ!」
私の叫び。それで最後の呼吸を使いきってしまう。
その隙を待っていたかのように、地面から不義の三席の根がいくつもいくつも、飛び出してくる。
ぎちぎちと、根によって両足を締め上げられ。
体に巻き付いた根が、スルリと私の背中にまわると、リュックの肩紐を引きちぎり奪い去る。
別の根が、下から左手に叩きつけられ、ナイフが吹き飛ばされてしまう。
くるくると回りながら飛ぶ、ナイフ。
浄光の光が、ゆっくりと霧散していった。




