リリーとの戦闘!!
手のひらへと突き抜ける灼熱感。
スクロールが、こぼれでた私の血を吸う。その染みた血へと導かれるかのように、ナイフの刃から溢れた浄光がはいずりまわる。スクロールの上で、私の血を貪るように浄光が踊る。
焦りをにじませたリリーが、自らの剣を抜きはなち、こちらへと駆け寄ろうとする。
阻む、硬質な金属音。
リリーの姿が、タウラの頼もしい背中に隠れる。二人の剣が打ち合わされる金属音。
そして二人の浄光が互いの身を滅そうと、空中で激しくぶつかり合うのが、タウラの背中越しに見える。
「ふぅ、ふうー。っはぁっ!」
私は気合いをいれ、突き刺したナイフを手のひらから、一気に引き抜く。
さらに激しく吹き出し、飛び散る血。
その血をさらに吸ったスクロールが、躍りまわる浄光によって変質していく。
空中に浮かぶ、結合したスクロール。その全てのスクロールの文字が順番に青白く、光り始める。
急速に書き変わっていく、全てのスクロールの文字。
それらスクロール自体も、浄光の光におおわれていく。
ダンジョンのルールの強制力によって阻害され、今にも崩壊しそうだったヒポポブラザーズを顕現する結合魔法陣が、急速に安定していく。
その魔法陣すらも青白く変質していた。
「そうは、させませんっ!」
リリーの必死そうな、切羽つまった叫び声。
見ればそこには、剣を振り抜いた姿勢のリリーと、そこからこちらの足元へと弾き飛ばされてくるタウラ。
リリーの剣の浄光がまるで小さな竜巻のように渦を巻いている。タウラはあれに打ち負けてしまったようだ。
とっさに私は身を屈めると、怪我をしたままの右手でタウラを受け止めてしまう。
ずしりとした重さとともに、右手に再び走る激痛。
リリーはニヤリと嗤うと、竜巻をまとった剣を地面に叩きつける。その反動で、体を回転させながら跳ね飛ぶようにして、こちらへと急接近してくる。
しゃがみこんだままの私へと、回転のままに振るわれるリリーの鋭い斬撃。
それを私は意識せずに、屈んだまま左手のナイフで受ける。
響かない、金属音。
──あれ、大した事ない?
いくら呪術師の近接戦闘の経験を継承しているとはいえ、しょせん、私の直接戦闘の技量は付け焼き刃に過ぎない。しかも姿勢も万全とは言いがたい。
うまく受けられただけでも奇跡的なはずが、斬撃の衝撃すら、何故かあまりない。
リリーと、目が合う。
再び焦り顔のリリー。その視線が、私の手の中のナイフへ。
驚愕に、見開かれるリリーの瞳。
何を驚いているのかと、私も逆手に持った自分のナイフを見てみる。
「……ローズ?」
私のナイフの浄光が、まるで、ローズのイバラの蔦のような形をとって、リリーの剣を受け止めていた。
──試しで作っただけのはずだったナイフなんだけど。私の血と呪いを再び吸ったせいなのか。思わぬ事になってる……
まるで本物のローズのように、浄光がナイフからスルスルと伸びると、剣を握る手を通りこし、リリーの腕にまで絡み付く。
私はナイフを持つ手首を、本当にひょいっと軽く返す。するとそれだけで、私の手首の動きに連動したかのように、浄光の蔦が大きく振るわれる。
ぶんっとリリーが投げ飛ばされていった。
こちらを驚愕の表情で見つめたままのリリーの顔が、空中を遠ざかっていく。
それとタイミングを同じくして、ついに完成した結合魔法陣からは、青く輝く光をまとったヒポポブラザーズの最初の一匹がまろび出てきた。




