芯の通った声!!
「ルスト、耳を貸すな。ルストならきっと自力でたどり着ける。その、答えとやらに」
すっと、ささやくようにタウラの声が耳に届く。リリーから得た情報を検討しようとしていた私の意識が、その芯の通った声に引き戻される。
私は大きく一度、息を吐ききる。
ゆっくりと自らを取り巻く状況を見回す余裕が生まれる。どうやらリリーからの情報にのまれて、視野狭窄に陥っていたようだ。
自らを取り巻く世界を俯瞰するように、心の中で一歩引いて見てみる。
笑みを浮かべ、こちらへと『大愚の四席』の魔石を示しているリリー。持っていた剣は鞘に戻されている。
しかし良くみると片手はいつでも抜剣出来る位置だ。その口調と表情ほど、自信満々という訳では無いのだろう。
『不義の三席』の本体たる、島の中央に鎮座した巨大な花。こちらからは不穏な雰囲気がする。
どことは言えないが、変化の兆しがある。
私が断った瞬間に一気に何か仕掛けてくる、そんな予感がする。
そしてタウラ。
その構えはとても自然体だ。
いつでもどんな事態にも対応してくれる安心感すら、その佇まいから感じられる。
ただただ、その剣にまとう浄光だけが彼女の激しい怒りを反映したかのように猛々しい。
「リリー」
「なんだい? 心は決まったのかな」
「ああ」
私はこわばった顔の筋肉を意識的にほぐして、朗らかに笑いながらリリーへと答える。笑みを浮かべることで体全体の筋肉の強ばりも少し解れる。
「私の答えは、これだ。『複合展開』──『結合』」
当初予定していた通り、複数のスクロールを解き放つ。一気に『展開』させ、結合魔法陣を空中に描く。
呼ぶのは、ヒポポブラザーズだ。
「あら残念。またまたふられてしまったみたいですね。でも、ルスト様? ダンジョンでは錬成獣は顕現させられませんよ。ダンジョンは完全に神に管理された領域。そのルールは絶対です。知らなかったんですかー?」
そう、バカにしたように嗤ってくるリリー。
私の展開した結合魔法陣が歪み、その形が崩れかける。
「知ってるさ。だからこそ、対策してないと思ってね」
私は金貨を集めるダンジョンでヒポポやローズが顕現出来なかった事を思い出しながら、リリーに答える。
右手の手袋を外すと、結合魔法陣を構成するスクロールの一つへ、広げた右手で触れる。
背後に回した左手で、愛用のナイフを逆手に抜きはなつ。
お試しで作ったツインホーンテールの角のナイフだ。刃を青白い光──浄光が走る。
「えっ、そんな。えっ、まさか……」
リリーが急に、動揺した声をあげる。
私は自らの右手ごと、一気にスクロールへと逆手に構えたナイフを突き立てた。




