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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第四章

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タイムリミット

 かつんと、穴の中の壁に鍵の魔晶石が当たった感触が伝わってくる。中が見えないから、はっきりとはわからないが、魔法陣が発動しているはずだ。


「肩、つかまって!」


 私はタウラに声をかける。

 ふわりと優しげに、肩にわずかな重みが加わる。

 タウラがしゃがみこみ、そっと私の肩に左手を添えたのだろう。


 次の瞬間、穴から溢れだした魔素の光が私を通して私とタウラを包み込む。


 世界が、切り替わる。


 私はもう慣れたが、タウラは初めてのダンジョンだ。警戒しているのだろう。いつでも抜けるように、腰に納めた剣の柄を握る右手に、力が入っているのが見える。


 私はゆっくりと起き上がると、服についた砂礫を払い落とす。

 ダンジョンの中はやはり地揺れの被害は無いようだ。呪術師の記憶にある通りの姿。


 しっとりと湿った黒っぽい石の壁、低めの天井には鍾乳石のような物が無数に見える。その自然の洞窟然とした壁と天井とは対照的に、床はまるでタイルが敷き詰められたかのように、平らだ。


 点々と存在している水晶のような石が発する、ぼんやりとした光がそれを浮き上がらせていた。


「足元、所々ぬれているはずだから滑らないように気をつけて。この床は、濡れると急に滑りやすくなるから。あと、中途半端な明かりに、あまり頼らない方が良い」


「ああ。了解した。そういうトラップが多いのだな」


 呪術師の記憶に基づいた私の警告に、すぐに理解を示すタウラ。中途半端に見えている分、錯覚させて陥れてくる罠がこのダンジョンには何個かあるのだ。


「ルストは道、わかるのか?」


「それが、最初のスタート地点がランダムで飛ばされるんだよね、ここ。だからしばらく動き回れば大体の場所の判断はつくと思う」


「それは難儀だな。仕方ない。どちらに行くかは任せるぞ」


 スッと剣を抜き放ち、慎重に歩きだすタウラ。

 私も《転写》のスクロールを一本だけ展開、後は左手にスクロールを構え、右手は空けたままにし、その後ろについてダンジョンを進み始めた。


 ◆◇


「どうだ、ルスト」


 何度目かの現れたモンスターを叩き切り、尋ねてくるタウラ。

 このダンジョンは実際の空間が基になっているからか、倒したモンスターが消えることもなく、素材が取れる。

 さっと剥ぎ取れる分だけ回収しているが、それでもなかなかの収穫だ。


 隅の暗がりから飛び出してくる、コウモリとヒルのあいの子のような飛行タイプのモンスターの羽。

 天井から滴る水滴に擬態したウォータースライムの亜種の体液。


 これらも錬金術でどう錬成に活用出来るか、今から楽しみだ。


 警戒するポイントさえ理解していれば討伐も問題無く、済んでいる。ダンジョン前の事で、少し力み過ぎに見えたタウラもいい感じに力みがとれたようだ。


 そのタウラからの問いかけに答えようと、私はちらりと《転写》のスクロールを確認する。このダンジョンに転移してから道をずっとオートで《転写》し、『記録』し続けているのだ。

 そのため、大まかな移動した経路が、地図のようにスクロールに記されていた。


 私はその地図と呪術師の記憶を照らし合わせる。


「うーん。まだだな。でもあと少しで、現在地がわかりそう」


 その時だった。ダンジョンの中にも関わらず、床が、壁が、天井が軋む。


 ぐらぐら、ぐらぐらと地揺れが私たちに襲いかかってきた。

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