慣れない動き!!
よく考えたら、タウラたちの模擬戦の時からおかしかったかも知れない。
「……いてて」
何故あんなことが出来たのだろうと私が考えていると、徐々に体に痛みを感じ始める。
「大丈夫か? どこか敵の攻撃、避けきれなかったのか」
心配そうな顔をするタウラ。タウラに遅れ、足元を気にしながら近づいてきたヒポポも大丈夫? と首を傾けて私の顔を覗き込んでくる。
「ああ。ヒポポも心配かけたね」
ヒポポを一撫でなでして、タウラに答える。
「いや、攻撃を避けきれなかったわけじゃ無いんだ。でもなんだろう、これ」
普段、あまり感じないタイプの痛みだ。首筋と、膝から下、足の前側に感じる鈍痛。
「──もしかして、筋肉痛?」
私はリュックから取り出したポーションを飲み干す。
それだけで、あっという間に消える鈍痛。どうやら少なくとも、筋を痛めていたようだ。
「鍛えてない体で、限界以上の動きをしたんじゃないか? だとすると、やはりおかしいぞ、ルスト。まるで歴戦の戦士が、引きこもりの研究者の体に宿ったみたいだ」
引きこもりの研究者と言われて苦笑いしか出来ないが、それでもタウラの言葉に得心する。
意識していなかったが、呪術師は長い年月の中で戦士としての力量も高めていたみたいだ。
かなり戦闘の記憶がある。その豊富な戦闘経験が徐々に私にも反映されつつあるようだ。
しかし当然、私の体は鍛えていないまま。
先程の動きの反動が痛みとなって現れたようだ。
「──だとすると、ポーションさえ用意しておけば、私も物理的な戦闘が可能だったりするのか?」
示された可能性に、研究者としての好奇心がうずき、小さく呟く。
「ブモっ!」
そこへヒポポから声がかかる。
敵の現れた地面のへこみ部分の前にいるヒポポ。
瓦礫が積み上がって出来た地面の穴。
近づき覗き込むと、少し下の方に真っ白な板のような物が見える。
「でかした、ヒポポ! あれが入口だ。そうか先程の敵は当然、ダンジョンの中から現れたんだし、入口があるよな」
得意気に尻尾を振るヒポポ。
同じように穴を覗きこんでいるタウラは、少し不安げだ。
「ルスト。これは少し、都合が良すぎないか? まるで私たちに入口の場所を教えてくれるために敵が現れたみたいにも見えるぞ──」
「なるほど、一理ある。わざと誘っている可能性もあるのか。だとすると、罠があるかもな」
「もちろん先程の奇襲は敵側からみたら、かなり惜しかった。ルストが、前のまま戦えなかったなら、これ以上無いぐらいの好機だったのは間違いないんだ」
「その場合は、入口が見つかるリスクも許容される、か。ふーん」
地面の穴を挟んで向かい合った私とタウラ。
タウラは、どうやら決定は私に委ねてくれるようだ。じっと私の答えを待つようにしてこちらを見つめている。
私はスクロールを取り出す。
そして、ヒポポを『送還』する。
「行こう。どちらにしろ、皆を守るためには行くしかないんだ」
私のその決断に、タウラも頷いてくれる。
私はゆっくりと地面に横たわると、鍵の魔晶石を持った手を、穴の中へと伸ばした。




