説明しよう!!
「ルスト師、それは確かなのか?」と驚き顔のカリーン。
皆が驚愕の表情で、私の取り出したモンスターを眺めるなか、いち早く質問を投げかけてきたのはやはりカリーンだった。
「はい、確認しました。このモンスターの触手の毒が含まれた水が、風土病の原因です」
「確かに川の水を使ってはいるが、貯水用の水瓶には浄水機能がある。中古のとは言え、モンスターの毒なら浄化できるはず……」と疑わしげなカリーン。
「はい、水瓶の水はしっかりと浄化されており、問題ありませんでした」と私はカリーンの疑問を肯定する。
「じゃあいったい、なぜだ?」
「問題は浄水された飲料用の水ではなく、生活用水として浄水せずに使っていた水なのです」
「っ! もしかして……」とカリーン。その視線はこの場に集められた二人に向いていた。一人は天幕で食事を提供していた責任者の女性。もう一人は単身者用の天幕の管理人。
「そうです。食器の洗浄用、それに衣服の洗濯用に、川の水がそのまま使われていたようです。実際に食器と洗濯済みの衣服から、微量ですがそのナマズの毒が出ました。その微量の毒が口と皮膚から体内に蓄積し、風土病が発症したのでしょう」と私は《転写》のスクロールを見せる。
「あ、だから単身者の患者が多かったのですね──」とアーリの呟き。
「カリーン様、誠に申し訳ございませんでした──」「この責任は──」と口々に謝罪しはじめる責任者の二人。
「いや、水瓶で浄水された水は限りがあるから、配給量が決められているのだ。それを頭割りで一律の配給量に決めてしまったのは私だ。二人の責任ではない。各施設については配給量を見直すようにしよう」とカリーン。
「それでルスト師、そなたは一晩で患者の治療を終えただけではなく、翌日には原因を突き止め、さらにそのモンスターを討伐し、原因を取り除いたのだな」とカリーン。その顔は驚嘆と何故か呆れたような表情が混じったものだった。
「規格外も過ぎると嫌味」とボソッと呟くロア。
私は聞こえてきたロアの呟きに苦笑する。
「いえ、実はここに来る途中でたまたま討伐していたのです。倒したのもヒポポですしね。だからこんなに早く解決したのは、偶然ですね」と素直に答えておく。
「ちなみに、討伐したのは昨日なので。まだしばらくは川の水は、そのまま使わない方が良いかと。そちらのお二人には洗う用の川の水は破棄してもらっています。まあ、供給元はすでにないので、数日もすれば問題なく使えるようになるはずです。ヒポポ、池には他にモンスターは居なかったよね?」と私。
「ぶもぶもっ」と首を縦にふるヒポポ。どこか自慢気なのが、かわいい。
私はそれを見て、姿勢をただすとカリーンの方へと向き直る。
「カリーン様、以上で、ご命令頂いた風土病についての治療と原因の排除、完了したことを報告とさせて頂きます」
カリーンもすっと顔を引き締めると為政者の顔になって返答してくる。
「ルスト師、こたびの働き、誠に素晴らしいものであった。期待以上、想像をはるかに越える働きだ。感謝する」
私はそこでかしこまった姿勢を捨てて、普通に尋ねる。
「今回の毒は、微量な物が蓄積して発症したようなので、まだこれから発症する者が出る可能性はあります。皆様には引き続き体調に変化があったら治療するので申し出て下さいと告知下さい」
「わかった。伝えよう」とカリーン。
「それと、浄水機能付きの水瓶、増設されるのでしたら予算をつけて下さったら作りますよ」とそれとなく、ねだってみる。
「予算か。わかったよ」と苦笑気味に約束してくれるカリーンだった。




