国境に到着!!
私たちはセイルークに乗り、南東に飛び続けていた。
眼下をいくつもの山々と川が過ぎた頃、リリー殿下が声をあげる。
「ルスト様、見えてきました。東の国境です」
リリー殿下の指差す先には、一本の街道がはしり、その途中、街道に被さるようにして大きな建物が二つ、隣接して建っていた。
どうやらあの二つの建物の間が、ちょうど国境の境になるらしい。
「了解。隣国の兵が居るはずだ。刺激しないよう、慎重に降下してくれ。セイルーク」
私は聞こえるようにあえて声を出して指示する。
背中に感じていた温かい熱が、ふっと消える。
──ふうっ。相当思い詰めて、ここ数日ろくに寝てなかったんだろうな、タウラは。今朝も出立は早かったし。安全帯はつけていたとはいえ、落ちなくて良かった。
私は自分もつけているセイルーク騎乗用の安全帯を軽く引っ張りながら、ほっとため息をつく。急ぎ作ったセイルークの鞍。そこから伸びる三本の安全帯だが、使っているのは私とタウラだけだ。
リリー殿下はよほど空が好きなのか、動くのに邪魔だと途中で外してしまっていた。
いくらセイルークが安定した姿勢をとって飛んでくれていたとはいえ、なぜに飛翔中のドラゴンの上で、ああも動き回る必要があるのか。まるで落ち着きのない子供のようだった。今も鞍から離れて、セイルークの首もとに横座りして、楽しそうにしている。
「あの、寝てしまっていて、すまない……」
背後からタウラの小さく謝る声が聞こえる。
ちらりと後ろを見ると、取り出したハンカチで顔下半分を隠したタウラが恥ずかしそうにこちらを見ている。
そして、そのおでこが少し、赤い。そこが私の背中に当たっていた部分なのだろう。
それを見て、なぜか急に私も気恥ずかしくなってしまい、しどろもどろに返事をしてしまう。
「いや、その……。うん。これから敵地にいくわけだし、休めるときに休んでおくのは大事だ、と思う」
私は前に向きなおりながら、セイルークの鞍にかけておいたリュックサックを手に取る。
ちょうどそのタイミングで、ふわりとセイルークが着地する。
「ふふ──。ルスト、先に降りている」
恥ずかしそうな様子が一転して、なぜか楽しそうに笑うと、タウラは安全帯を外し、ひらりとセイルークから飛び降りる。
リリー殿下はすでに先に地面にたち、こちらをじっと見上げていた。
──リリー殿下、セイルークが止まる前に飛び降りてたんじゃないか? まあ、どうでもいいか。それよりタウラが元気になったみたいで良かった。最後、何で笑っていたかはよくわからないけど。
私がリュックを背負い終えた頃合いを見計らって、セイルークが顔を寄せてくれる。
私はありがたく、セイルークに下ろしてもらった。
わらわらと国境の建物から出てくる人々。私が地面についたときには、すっかり彼らに取り囲まれていた。




