呪術の力の一端!!
ハーバフルトンにイブの妹の錬成獣リトを植えて、街に同化させるのに、予定外に時間がかかってしまった。
最終的には建物として生やした物はごく一部にとどまった。緊急時の避難用の建物を街の周囲に等間隔に配置して回った程度だ。
ちょうど今、最後の避難用の建物が生え終えたところだ。
思っていた以上にハーバフルトンは発展してしまっていて、特に街の中心地は土地が余っていなかったのだ。
その分、地下茎を既存の建物の基礎部分に念入りに張り巡らして、地揺れに対する補強はしておいた。
私がすぐに出来る措置はこれくらいだ。私はリトの本体にあとを託すと、すぐにセイルークに飛び乗る。
セイルークが羽ばたき、風が舞い起きる。見学していたハーバフルトンの住人達の髪や服がばたばたとはためく。
ふわりと浮かび上がったセイルークに向けて歓声が起きる。
──ああ、そうか。この街を囲むように生やした竹の建物群。それらは今回の事態でカリーンがハーバフルトンにも配慮しているシンボルの役割もあるのか……
私はセイルークを旋回させて、歓声をあげ手を振っている住人達に手を振り返す。
空から見ると、よくわかる。
皆が心から安心しきっている訳では無いのだと。皆の心に忍び寄っている不安。
それを、歓声をあげることで。
英雄であるカリーンを称賛することによって。
自分達に信じ込ませているのだと。
自分達がこんなにも称賛しているカリーン様が、救国の英雄と呼ばれる私を遣わし、これだけの建物を作り対処してくれている。だからきっと自分達は大丈夫に違いない、と。
右手が、うずく。
手袋の下で呪いが脈打っているのが、わかる。
──呪術が、皆の不安に反応している。そうか。これは呪術の力を手にしたから、皆の心の不安が手に取るようにわかったのか。呪術に有用な負の感情の把握。これも力の代償なのか。
私はぎゅっと右手を握りしめる。
「いつまでも偽りの安心を与えているようじゃ、カリーンの名をすたらせるよな。『不義の三席』、急いで止めなきゃ、だよな」
私はセイルークをかり、急ぎプタレスクを目指した。隣国への出立までに準備を万全にするために。




