イブの力を借りよう!!
がりがりと削られていく大地。ヒポポブラザーズたちのひづめによって大地が平らにされていく様は、まるで海岸を侵食する波をはや回しで見ているかのようだ。
ただ、波との違いは、巻き起こる砂塵と残される大量の土砂の山。
私はヒポポブラザーズたちの順調な様子を確認すると一番近くの建物へと近寄る。その竹の壁に左手をあて、呼び掛ける。
「『バックドア』起動。『遠隔接続』イブ『起きて』」
一瞬の間。竹の建物の壁にある節から伸びた枝の部分が、もにゅっと変形したかと思うと、そのままポロリと落ちてくる。私は手袋をした右手で、それを受け止める。
手のひらの上にあるそれは、ミニチュアサイズのイブの分体だ。
小さなタケノコから、これまた小さな手足が生えている。
「うまくいったな。イブ、おはよう」
このイブの分体を遠隔で呼び覚ます処理は、実は最近、実装したばかりだった。
セイルークのための『ボックス』と『ポイント』探しで、見聞きした新しい知見。それはどうやらこの世界の根幹を司るシステムの一端としか思えないものだった。
それに触れられたというのは錬金術師としては大変有意義な経験だった。領都プタレスクを統括するシステムの中に、その知見を元にバックドア経由でイブを遠隔起動する仕組みを組み込んでみたのだが、しっかりと作動してくれた。
「起きてすぐで申し訳ない。分体を連続生成。土砂の処理をしてくれ」
短い手足をふりふりしていたイブがびしっと両足を揃え、片手で敬礼のポーズをする。
次の瞬間だった。
目の前の地面の一部がぽこっと盛り上がってくる。土を突き破り生えてきたのは、新しいタケノコだ。それはすぐさま人の子供ぐらいまで成長すると、にょきりと手足が生え、自らを地面から引き抜くようにして出てくる。
まるでそれが合図だったかのように、ぽこぽこ、ぽこぽこと、あちらこちらで地面が盛り上がりタケノコが次から次へと生え、成長し、手足を得て地面から抜け出してくる。
私の手のひらの上の、ミニチュアイブの前に整列するタケノコたち。
目の前を埋め尽くすタケノコたちの姿はなかなか壮観だ。規律正しく整列した姿は、ちょっと軍隊っぽい。
そういえば私の背後にいるこの地域の住人たちは、やけにおとなしい。どうやらヒポポブラザーズたちの迫力と突然現れた動くタケノコたちの軍団に、言葉も無いようだ。
私が少し驚かしすぎたかと、申し訳ない気持ちになっている間にも、手のひらの上のミニチュアイブが指示を出している。そのミニチュアイブが振り上げた小さな手の指揮に従うようにタケノコ達が、土砂の処理に動き出す。
みるみる片付いていく土砂。
私はモンスター避けの魔法陣が描かれていた空間が、タケノコ達によって無事に片付けられ、綺麗に均されているのを確認する。
実は、私にはイブを呼び起こしたもうひとつの、そして本当の理由があった。
モンスター避けの魔法陣から魔素を取り込むために、イブは常時、その魔法陣に接続している。その接続を逆に利用して、私は魔法陣を修復するつもりだったのだ。




