頼まれ事!!
「カリーン!」
私はカリーンの執務室に入りながら声をかける。
巨大な通信装置を囲むようにして頭を寄せあうカリーンのスタッフ達。
「おおっ! ルストかっ! カゲロ機関に怪我人を任せられるって伝言、確かに受け取ったぞ。助かる」
そのスタッフ達を掻き分けるようにしてカリーンが近づいてくる。
「ああ。それはシェルルールの手柄だ。それでプタレスクの被害はどうだ?」
私は軽くカリーンに向かって手を横に振って答える。自分の部下の手柄を横取りするような誤解は解いておくに限る。
「そうか。だがそれも、ルストの日頃の指導の成果だろう。でだ。揺れの大きさの割には領都の被害は少ないな。唯一、ここだ。──頼めるか、ルスト師」
カリーンはバサッと地図を広げ、その一点を指差す。
私はちらりとカリーンの指差した地図の場所を見て、何を期待されているかを理解する。
「わかった。私が確かに適任だろうな」
「良かった。いつも頼りにしてるぞ」
バシッと肩を叩いてくるカリーン。本人はこれでも手加減しているつもりなのだろう。──痛いが。
「それでだ、ルスト。プタレスク以外、なんだが……」
「──大陸中で揺れたのか?」
私はカリーンの言葉を引き継ぐようにして確認してみる。
「どうして、それを! ……夜間で未確定な部分もあるが、王都に集まりつつある情報を元に推測すると、ルストの言う通り、大陸のかなりの場所で揺れたらしい。特に隣国の被害は大きいそうだ。しかしな、この情報はまだこの部屋から出ていないはずだぞ! 王都でも、本当についさっき手にいれたばかりの情報なんだからなっ!」
驚きに目を見開き、それでも律儀に教えてくれるカリーン。普段、ひょうひょうとしているカリーンがここまで驚くのは珍しい。
「実は、この地揺れなんだが、心当たりがあるんだ」
「何っ! 本当か!?」
勢いよく食いついてくるカリーン。顔が近い。
「まてまて。確実な情報じゃないんだ。それで、現状の対処が終わったら話す時間を作って貰えるとありがたい」
私はカリーンに心当たりがあることを伝えるついでに、その点をお願いしておく。
じっとこちらを見上げるようにして、そんな私の瞳を見つめるカリーン。きらきらとした瞳の圧がすごい。
「──ルストからそんな事を言うなんて、珍しいぞ」
「そうか?」
「ああ。よっぽどのことじゃなきゃ、そんな事を言わんだろ、ルスト。わかった。確かに今は事態への対処が優先だ。終わったら絶対に時間は作る。だからその時は、洗いざらいはいて貰うからなっ!」
ビシッとこちらに指を突き付け、仁王立ちで宣言するカリーン。行儀が悪い。
「わかったわかった。私から言い出したことだ。ちゃんと相談させてくれ。それじゃあ私はさっきの頼まれ事をすませに行ってくるよ。すぐ戻る」
「普通の人間なら、すぐ戻れるような案件じゃないんだがな。よろしく頼む、ルスト師」
カリーンの呆れ半分、諦め半分の笑顔に送られ、私はカリーンの執務室のある建物を出る。
少しでも急ぐためヒポポを顕現させ、その背にまたがった。




