地揺れ!
私は目の前のタウラの剣に再び封印のスクロールを丁寧に巻き付けていく。
私の血のついた部分の紋様が書き換わっていたのは大いに気になる。しかし今は先ほどの地揺れが優先だ。
「勘違いなら、いいんだけど──」
呪術師の意識を流し込まれた時に得た記憶で一つ、地揺れと関係していそうなことがあるのだ。
ぐるぐる巻きになったタウラの剣をローズに隠してもらうと、リュックを片手に部屋を出る。使いきってしまったポーションも再度錬成して大量に詰めてある。
建物の扉は歪むこと無く、スムーズに開いた。
──さすがイブ特製の建物。あの程度の揺れじゃあ問題はなし、と。
外に出てすぐ、ぱっと辺りを見回す。夜のとばりに遮られ、はっきりとは見えないが、大きな被害は出てなさそうだ。照明の魔導具もいきている。その光に浮かび上がって見える建物も、大きく崩落しているものは見当たらない。
領都プタレスクはいまだにイブ製の竹の建物が大半を占めている。地揺れにはかなり強い。問題は、私が呪術師から得た記憶が正しければ先ほどの地揺れはこの国どころか大陸全体で揺れた可能性があることだ。
そのままカゲロ機関の本部を目指して急ぐ。
到着した本部の前は、それでも人でごった返していた。
「ルスト師!」
シェルルールが、部下たちに何か指示をしながら、私の方へと駆け寄ってくる。
「シェルルールか。無事そうだね。皆も大丈夫か? 機関に被害者は?」
「はい! 現在確認がとれている分ですと、機関員、軽症者が三名。いずれもすでに治療済みです。今は運び込まれてくるだろう怪我人の治療を行える体制を整えていますー。カリーン様にも怪我人を回して頂いても対応可と報告済みです」
広場前に張られている簡易的な天幕。各機関員がそれぞれの収納拡張済みの鞄やリュックから、資材を取り出しあっという間に準備が進んでいっているのが見える。
「素晴らしい、シェルルール。この短時間で完璧な差配だ。そのまま治療体制を整えてくれ。プタレスクでは大きな被害は出てないだろうが、それでも治癒用のポーションは惜しみ無く放出して良い。必要なら私が錬成に回るから」
「おお! ルスト機関長の高速錬成が再び見られるぞ」「やった! 俺、次こそはあの超絶技巧のうち、一つでも見て盗むんだ……」「綺麗よね、ルスト師の錬成。あの魔法陣の構成は眼福──」
なぜか周りにいたカゲロ機関の機関員達から上がる歓声。シェルルールがほどほどでそれを止める。
「ほら、みなさん。手を動かして。ポーションの在庫は潤沢にありますし、ルスト師の錬成が見れるとしても、後ですよ。それよりも、多分そろそろ傷病者の第一陣が来てもおかしくないです。《転写》担当と、治療担当は特に急いで準備を進めて下さい」
再び忙しく動き始める機関員達。
私はその様子を誇らしく、そして頼もしく思いながら、この場は皆に任せることにする。
いったんここから離れることをシェルルールに告げると、私はカリーンの元へと向かった。




