第三章エピローグ!!
深夜の研究室。
私は有り合わせの材料で作った右手の手袋を外すと、ゆっくりと手のひらを開く。
「この状態だと、大丈夫か」
腹を剣で貫かれ、危うく呪術師に乗っ取られそうになってから、はや数日。
ようやく落ち着いた。
この数日は、ばたばたと忙しかった。
昨日などは、カリーンからはハーバフルトン防衛の功績を称えられ、民意高揚のためのパレードに駆り出された。
セイルークにまたがり、英雄と持ち上げられて、着飾っては手を振り続けるという、なかなか晒し者なお仕事。
まあ、皆が笑顔なことが唯一の救いだ。それにその分、特別賞与はもらったけれど。
そして明日には、正式な領都の発足式が控えている。私はセイルークに乗っていくので現地入りは当日で済むのはありがたい限りだ。
そんなこんなで、ようやくこの右手の事を調べられる時間が出来たのが、今という訳だ。
「やっぱりこれって呪術、だよな」
私は実験用に用意した魔石を右手で握りながら呟く。
右手からこぼれでた呪いが、魔石にまといつくように包み込む。
いっとき、呪術師の意識を流し込まれていたせいか、それに付随して色々な情報もその中に含まれていた。
そのうちの一つに、呪術についての物もあったのだ。そのため、何となく呪術の使い方がわかる。
──あの時、手にした『ボックス』に見えた何か。あれがこの力を手に入れた原因だよな。どう考えても。
同じように準備した魔晶石を握るが、こちらは呪いが弾かれてしまう。
──錬成した物には、呪いが非常にかかりにくくなるのか。呪術師が錬金術を嫌がる訳だ。
私は再び魔石を手に取る。
手にすると、どのくらいまでの呪いが付与できるか、自然とわかる。
私は物は試しと、呪いをかけてみる。
──紋様は、と。なるほど。いくつもの紋を重ねて、発現する呪いの内容を決めるのか。少し魔導回路に似てるけど、こちらの方が何となく文字的な雰囲気だな。
私は新たに手にした知識を元に簡単に魔石を呪ってみる。
そうして魔石に刻んだ紋様は、まるで翼のような形をしていた。
軽く力をいれて、出来たばかりの呪われた魔石を投げあげる。
手を離した瞬間、発動する呪い、
魔石は空中でふわりと止まると、そのまま落ちることなく空中にとどまり続ける。
しかしそれも長くは続かない。魔石に含まれた呪いの元となるもの。それが徐々に消費されて行くのだ。
これが呪いの最大の特徴。呪われたモノの『ポイント』を消費して、発動するのだ。
どうやらこの世界のモノは、多かれ少なかれすべて『ポイント』を持つようだ。
そしてその『ポイント』がなくなると、こうなる。
目の前の呪われた、ちょうど『ポイント』が枯渇した魔石が落下する。
そのまま床にぶつかる直前、煙のような物を出して、魔石は完全に消えてしまった。
「これはやっぱり気軽には使うわけにはいかないな」
私は外した手袋を取ると、隠すようにして再び右手につけた。




