スリーカウント!!
アンノウンの接近まで、後一日。
「うん。完璧だ。準備、終わっちゃったね」
私は《転写》のスクロールで目の前に並ぶ三本のポーションの情報を読み取り、その結果に太鼓判を押す。
カゲロ機関の現状の総力を結集して作成した、三本の特製ポーション。三本一組のこれが、今回のアンノウンの来襲への切り札だ。
ちゃんと予備もニセットある。
「終わりましたね」「私たち、こんなに錬成の技術が上がってたんですね……」「少し物足りないぐらい……」
ざわざわとしているカゲロ機関の機関員達。私の最終チェックの結果を聞こうと、今居るメンバーは全員集合していた。
しかし、どうやら自分達の成し遂げたことに、まだ実感がわかないらしい。ここはちゃんと伝えなきゃなと、私は一つ咳払いをする。
「皆、静かにしてください」
私の仕草から察してくれたコトが、皆を静めてくれる。
私はコトに感謝を込めて軽く頷くと、全員を見回すようにして話し始める。
「カゲロ機関の機関員全員に感謝を伝えたい。素晴らしい仕事ぶりだ。この三本のポーションは、完全に仕様通りの仕上がりになっている。敵が迫る緊張感のなか、限られた時間で、皆は完璧な仕事ぶりを見せてくれた。そしてこれまでに無い錬成品を一つ、新しくこの世に誕生させたんだ」
私はそこで一度言葉を切ると、再び皆を見回す。最初は、どこか戸惑いげだった表情が散見していたが、今は皆、自信に満ちた顔つきだ。
「特にコト。よく皆をまとめてくれた。それに錬成の技術も向上しているな。二本目のポーション作成時の、スクロールを使った反応速度の調整が素晴らしかった。あれは、かなり練習しただろう」
「はいっ。あの、ありがとうございます……。ルスト師の錬成した最高級の素材だったので、凄いやり易かったです」
「まあ、そんなに謙遜しなくてもいいさ。それで、コト。良かったらこの三本一組のポーションの名前をつけてくれないか。これらは、完全に新種のポーションになる。将来的にコトのつけた名前が錬金術のアーカイブに載ることになるだろう」
「えっ! あの、本当にいいんですか? 考案したのも、全体の統括をしたのもルスト師です。ルスト師が名前をつけるべきかと……」
「これは皆が力を合わせて作った物だ。私もハルハマー師も不在の間、よく皆をまとめてくれていたコトにこそ、名をつけて欲しいと私は思う」
私の説得に、周りの他のカゲロ機関の機関員達も口々に賛同してくれる。
「そうですよ、コトさん」「是非お願いします」「かっこいいの頼みますよ!」
じゃっかん、ハードルを上げてくる発言もあったが。すぐにコトは決めたのか、ゆっくりとその口を開く。
「それでは……この三組のポーション、『スリーカウント』というのは、どうでしょう……?」
「『スリーカウント』か。うん、いい名だ。皆もそう思うだろ?」
周りの機関員たちに話をふる。
口々に上がる賛同の声。
それは、心のうちに熱を秘めながらも、決して熱狂的にはならない、理性に裏打ちされた人間達の声だった。
私は皆の声を、同じ錬金術師として頼もしく思いながら聞いていた。
書籍発売、詳細が決まりました!
7月21日 発売予定
レーベルは、MFブックス様より。
イラストは、又市マタロー様です!
タイトルが「辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~」になります。
それにともない、次の更新あたりでWebのタイトルも、上記の物に統一致します。
よろしくお願いいたします~




