想定外!!
「これは、興味深い。興味深いがあまりに都合が良すぎじゃ……」
さっさと食事を済ませた私は逃げるようにしてカゲロ機関の本部に戻ってくると、意気揚々と試料の分析に取りかかっていた。
支給された潤沢な予算で揃えた機材。
その潤沢な予算は、人材面でも効果を発揮していた。優秀な錬金術師が王都を始め、各地からカゲロ機関に集まり続けているのだ。
わざわざ遠方から来てくれた、彼ら彼女らカゲロ機関の構成員達に、支給している給与も当然、潤沢だ。少なくとも懐かしの錬金術協会の、同ランクの錬金術師の倍は払っている。
コトやシェルルール等の古参メンバーには、当然それ以上支給しているが、それでも十分な利益が出ているとハルハマー師が嬉しげに言っていた。
それはもう、みな、やる気に満ちている。
ハルハマー師は、私の救国の英雄だとか竜を従えし者だとかいう、恥ずかしい二つ名の名声に惹かれて人が集まっていると言っていたが──
「ルスト師、結果出ました。しかし、これ──」
私は素早く渡された資料に目を通す。それはここまでの検証の結果を裏付ける物だった。
「コト、ありがとう。……やはりな。間違い無い。早速、この結果をもとに錬成に入ってくれ」
「わかりました。素材はどうされますか?」
「私の作っておいたストックがある。それを。無制限で」
「っ! いいのですか! どれも最高級の等級ですよね?」
「ああ。コトの手堅い仕事ぶりはいつも見せてもらっているから。コト達なら無駄にしないで活用してくれるでしょ」
「ありがとうございます! 早速、皆で取りかかります!」
興奮ぎみに早足でかけていくコト。
私も同じ錬金術師として、最高の機材と最高の素材を使う楽しさは知っているのでそれを微笑ましく見送る。
──良いものは反応が違うんだよね。こちらの細かい調整に敏感に反応してくれるから。その分、繊細さがいるけど。カゲロ機関の皆も大分腕をあげてきたしね。それに素材はまた錬成すればいいだけだからね。
私はここまでの結果を簡単に羊皮紙にまとめるとカリーンへ途中経過を報告しに向かおうと、カゲロ機関の本部から外へと出る。
──このまま予定通りであれば十分に間に合う。私にとって都合の良すぎる展開だ。多分だが、敵はセイルークの事を警戒しすぎている感じがある。
すぐにカリーンのいる建物が見えてくる。
──確かにセイルークのブレスはアンノウンに完全に無効化されていたし、爪や牙といった物理的な直接攻撃は届かないだろう。セイルークの事を『勇者』と呼んでいた。それと何か関係があるのだろうな。とはいえ、錬金術の事を舐めている? いや、違うか。敵の把握している錬金術はリハルザム基準なのかもな。
物思いにふけりながら、カリーンの執務室の扉をノックする。
「入っていいぞ」
カリーンの声。私は扉を開ける。
部屋にはちょうどタウラ達も揃っていた。私は皆に朗報を伝えた。
アンノウンの接近まで、後二日と迫っていた。




