偉容を見よう!!
「これはまた、巨大だ……。ロア、どうだ?」
「──見えそうで、見えない」
両手を眼鏡の魔導具にあて、目を細くして眼下の敵を見つめるロア。無表情に、しかし口調はどこか悔しそうにそう告げる。
どうやらロアの遠視と透視の魔眼でもダメなようだ。
ハーバフルトンに戻った私たちはすぐさま待機していたタウラの案内で、セイルークに乗り、迫りくるという巨大な敵の偵察に来ていた。
カリーンはハーバフルトンで陣頭指揮を執っている。最悪の場合はハーバフルトンの放棄もあり得る事態だ。
今私たちが行っている偵察の報告によって、決定されるだろう。
そしてそれは今のところあまり芳しくはなかった。
何せ、敵の姿が見通せないのだ。その周囲を真っ黒な何かが覆っていた。これを見ていると、アンデッドドラゴンのアンがいた墓雲も積乱雲で覆い隠されていたのをどうしても思い出してしまう。
ただ、何か悪意のあるものが中にあるのは間違いない。時おり、真っ黒な何かを突き破って小型のモンスターが外へと出てくるのだ。
「今出てきたのは、ツインテールホーンの、変異種。体表に、黒い血管みたいなものがいっぱい……美味しくなさそう」
遠視で見た結果を教えてくれるロア。
私の目には小さすぎてよくわからないが、ロアが次々に報告してくれるモンスター達にはさまざまな種類がいた。
ただ、そのどれもが通常のモンスターから変異したもののようだ。
しかも徐々にハーバフルトンに近づいている。
「ルスト、どうする? ロアでも見通せないとなるとお手上げだ」
ここまで一緒にセイルークに乗って案内してくれたタウラが聞いてくる。
私は懐中時計を懐にしまいながら、それに答える。
「──危険だが、あの黒いのが通りすぎた所に着陸しよう。出来るだけ手早く済ませるけど、高確率であの変異種モンスターが襲ってくるはずだ。二人とも、すまないがモンスターを防いで欲しい」
「うん」
「わが剣、ルストのために振るおう」
こちらを向いて無表情にうなずくロアと、嬉しそうに笑いながら剣を抜き構えるタウラ。
頼もしい二人だ。
そんな私の感情が絆を通して伝わったのか、セイルークも一鳴きする。
「ぎゅー」
「ああ、すまない。もちろん、セイルークの爪にも期待しているよ、よろしくな。よし、セイルーク、あの砕けた岩の所に着地してくれっ」
私の指差した先を目指し、セイルークが降下を開始した。




