アンちゃん!!
セイルークが大きく羽ばたくと、落下していく物を追って飛び立つ。
あれは、敵の魔石だろう。霊廟の時の事を考えると、何か手がかりになるかもしれない、とセイルークが感じているのが伝わってくる。
私はセイルークを見送り、ゆっくりと体を起こす。
周囲は様変わりしていた。衝撃波のせいか、骨がひどく散乱している。
「あれ、リリー殿下は?」
私が辺りを見回す。
すぐに、それらしきものが。
少し離れたところから、人の腕がつきだしていた。突き出た手が、バタバタと動いている。
「しっかり頭を下げさせたと思ったんだけど、もしかして体を起こして、飛ばされたのかな──?」
私は、首をひねりながらバタバタと動く手に近づく。
見下ろしながら、手がかかる、と内心ため息をつく。そのまま見なかった事にすると言う強烈な誘惑。しかし、何とか誘惑をふりきると、私はバタバタ動く手をつかみ、引っ張りあげる。
──お、おもい。
リリー殿下の顔が骨から出てくる。
「ぶふっ、はぁはぁ。口の中がジャリジャリします……」
ぺっぺと、細かな骨を吐き出すリリー殿下。上半身が出たところで私は手を離し、あとは周囲の骨を掘るようにして、どかしていく。
自分がしっかり伏せていなかったのが良くなかったと気づいているのか、掘られ待ちのリリー殿下は恥ずかしげだ。顔が赤い。
「あ、ありがとうございます。ルスト様。敵はどうなりました?」
「セイルークが無事に倒しましたよ。魔石が出たので紋様が確認出来るかと、セイルークは回収に向かってます」
「アンデッドドラゴン殿は?」
二人して向かう視線の先には、変わらずに地面に突き刺さったままの針。ドラゴンブレスの衝撃波でもそのままだ。
「──せめて、抜いてあげましょうか」
ようやく立ち上がれたリリー殿下と、二人してアンデッドドラゴンの元へと向かう。
出来るだけ優しく、これ以上損壊が増えないように気を付けながら、まず幼女の体を貫いている針を地面から抜く。
次に、幼女の体を私が支えると、リリー殿下が針をその体から引き抜く。
完全に針が抜けた幼女の体は、ひどく軽かった。
次の瞬間、私の腕の中で、幼女の姿がグニグニと変形し始める。まるではじめて見たときの変形のようだ。
私が驚きながらも、落とさないように気を付けてその変化を眺める。
再び溶けた幼女の体が輝く一つの固まりとなる。それは、私の両手に乗るぐらいの大きさの光。
原初魔法らしき文字と魔法陣がその周囲を巡り、一気に光が強くなる。
光が収まると、私の手のひらの上に骨でできたドラゴンが、ちょこんと座っている。
はじめて見たときの何十分の一サイズのミニマムなアンデッドドラゴンが、私の手の中からこちらを見上げていた。




